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2005年7月号

NECインフロンティア
代表取締役社長
木内和宣氏
ビジネスホンを成長路線に乗せる
国内外とも製品力で攻めに

事業統合から4年。NECインフロンティアは新たな成長路線に突入する。1年間の準備ののち4月から舵取りを行う木内和宣新社長は、「“モノ作り”で世界に伍していきたい」とビジョンを語る。

Profile

木内和宣(きうち・かずのり)氏
1945年長野県生まれ。70年3月に北海道大学大学院・工学研究科電子工学専攻修士課程修了。同年4月、NEC入社。95年6月、交換第一ネットワークシステム事業部長。2000年4月、執行役員兼NECネットワークスネットワークシステム事業本部長。01年4月、執行役員兼NECネットワークス国内事業本部長。03年4月、執行役員常務。04年4月、NECインフロンティア入社、顧問。同年6月、代表取締役専務。05年4月、代表取締役社長に就任。現在に至る

  2004年度の連結売上高は1082億円で、前年度比3億円減でした。しかし、営業利益、経常利益、当期純利益とも、大幅に改善しました。

木内 NECと日通工の統合以降、ずっと続いていた売上高の右下がりが止められなかったのは残念ですが、底を打ってターンアラウンドできる状況まで齊藤紀雄前社長がレールを引いてくれました。
 05年度はさらにもう一歩進め、「成長路線に乗った」といえるレベルにまで持っていきたいと考えています。

  新社長として、これからの経営ビジョンをどのように描いていますか。

木内 齊藤前社長は「営業を強くする」という方針を掲げ、ソリューションビジネスに力を入れました。その結果、強い営業力が備わり、業績は回復基調に乗りました。
 今後は、強くなった営業が売っていく“商品”が重要になると考えています。そこで、“モノ作り”に軸足を置き、商品力で世界に勝てる会社にしていきます。
 当社の主力であるビジネスホンやPOS端末の市場には、ソリューションが求められる領域もありますが、“箱売り”が成立する領域も多いのです。このため、まずは市場競争力のある商品をきちんと作ることを重視していきます。

  商品が良ければ、ソリューション領域でもユーザーに受け入れられますね。

木内 その通りです。例えば、NECは近年、モノ作りからソリューションビジネスへと大きく舵を切っています。ですが、ソリューションを展開するためには当然、それを支える商品が必要です。外部から調達するのも1つの方法ですが、基本的にはグループ内で作るべきだと考えます。
 そこで当社が商品を作り、それをNECがソリューションのコアコンポーネントに採用する。そうしたグループ内のモノ作りの会社になることも当社のミッションの1つだと思っています。

ビジネスホンはBRICsを視野

  主力のビジネスホンは国内および北米市場で特に好調ですね。

木内 国内市場は拡張ボードと電話機ユニットで簡単にIP化を実現できる「Aspire」シリーズが、前年比10%の伸びで順調なセールスを続けています。050番号によるIP電話サービスの本格化も追い風となっています。
 北米市場では年々シェアが上昇し、04年は年間で2位、第3四半期と第4四半期には1位を獲得できました。
 しかし、両市場とも飽和状態にあり、今後大きな右肩上がりの成長は見込めないでしょう。確かに、この両市場をきちんとやっていれば、当社はある程度の利益を出していけます。だが、成長路線に乗せていくためには、他の地域にも目を向けなければならないと思っています。

  注目している地域はありますか。

木内 社内では「最終的にはBRICsだ」と言っていますが、まずは中国や東南アジアを見ています。
 新興地域では毎日のように中小企業が生まれています。そしてまず必要になるのが電話なのです。その電話が現在のビジネスホンでいいのかということはまだ分かりませんが、当社がモノ作りで勝負できるメーカーになっていけば、どう変化しようと、柔軟に対応できます。
 そういう新興地域は無数にありますので、ある意味われわれの市場は無限大とも言えるでしょう。

  中国市場には、どのようにアプローチしていきますか。

木内 実は、昨年度から取り組んでいますが、成果は今一つです。
 製品面では7月に、“海外市場向け機能限定版のAspire”という位置付けの「TOPAZ」を投入してラインナップを拡充しました。ですが、肝心の販売チャネルの確立が追いつきませんでした。
 昨年度は、上海に販売拠点となるNEC Infrontia Asia Pacific(Shanghai)を設立しましたが、今年度は北京や広州にも広げます。さらに地元のディーラーとも代理店契約を結び、販売チャネルを約200社に拡充する予定です。

  先ほど、新興地域向けのビジネスホンは今後形態が違ってくる可能性を示唆されましたが、具体的にどう変わるのでしょうか。

木内 これらの国々は、通信インフラが日本ほどは整っていません。特に中国は広大ですから、有線よりも無線インフラが主流になっていくことも十分考えられます。そうなると、ビジネスホンもそれに対応しなければなりません。

新規チャネルを開拓する

  国内のビジネスホン市場には、どのような戦略で臨みますか。

木内 製品面では、Aspireを投入してからもうすぐ3年になりますから、次の機種を考える時期に来ています。基本的にはオールIPをターゲットにした機種にするつもりです。
 ただ、IP化の波が一気に来るかというと、PBXとはかなりギャップがあると感じています。
 内線のIP化は外線のそれとは違って、単純にコスト削減効果を提示できません。当社の「I_Teamesse」のように、PC系との融合で業務効率の向上等の効果が出て、かつコスト削減にもつながることが訴求できなければなりませんが、ビジネスホンではまだ難しいのが実情です。
 ですから、まだしばらくは、いつでもIP化に対応できるAspireの強みが活きると思っています。

  新たな訴求点という意味では、現在FOMA/無線LANデュアル端末への注目が高まっています。PBXではその対応が重要なポイントになっていますが、対象ユーザーも大企業のみだったものが、最近ではビジネスホンのターゲットでもある中小企業に降りてきています。

木内 間違いなく、ビジネスホンの領域にも入ってくるでしょう。当社も現在、Aspireで対応すべく準備を進めています。

  いくら製品面で差別化を図っても、国内は完璧なリプレース市場になっているため、シェアを伸ばすことは容易ではありません。

木内 おっしゃる通りで、多少の「取った取られた」はあるにせよ、基本的にユーザー各社のビジネスホンはメーカーも販売店も決まっています。そこで当社は、新たなチャネル開拓に力を入れていきます。
 オフィスに出入りしているのは、通信機ディーラーだけでなく、事務機やオフィス家具のディーラーもいます。彼らの市場も飽和状態ですから、扱う商品群を増やすことで生き残りをかけています。「複合機に加え、オフィス家具や電話もすべてセットで売りたい」というようにです。
 これはわれわれにとっては大変ありがたい話です。彼らのユーザーは競合他社のビジネスホンユーザーである可能性もあるからです。そこに一括で当社のビジネスホンが入れば、容易に他社からのリプレースを実現できるのです。
 他方でキャリアとの連携もできると思っています。例えば、提携キャリアの電話サービスとセットで導入してもらえば、通信料を割り引くというような形です。
 こうした連携は、お互いにWin-Winの関係になれますので、今後一層強化すべきと思っています。

  新規チャネルを開拓しても、中心はこれまで通り通信機ディーラーだと思います。彼らに期待することは。

木内 IP化に限らず、今後はいろいろな技術への対応が必要になります。そうしたものにアグレッシブに挑み、幅広い技術を習得していただきたいと思っています。当社もそのための支援体制を整えていく方針です。

開発側で利益を出す

  御社の経営指標として、ROE(株主資本当期純利益率)10%以上を目標に掲げていますが、達成時期はいつ頃になると見定めていますか。

木内 06年度には達成したいと考えています。ですが、ことさらROEを強調しているわけではなく、当社が重視しているのは営業利益です。単に利益を出すというだけなら、土地や株を売ることでも可能ですが、やはり営業で稼がないと何も始まりません。
 当面の目標は、売上高比で6%の営業利益を出すことです。04年度の実績が2.2%で、05年度の目標が3%ですから、2倍の数値目標になるので苦しく見えますが、私は十分に射程圏内だと思っています。

  最初におっしゃったように、営業力は強くなっていますが、目標達成のためにはほかに何が重要だと思いますか。

木内 もっともっと利益体質を強くしなければなりません。なかでもモノ作りに重点を置く以上は、開発面の革新が不可欠だと考えています。
 当社は、NECと日通工が統合することで新たなスタートを切りましたが、この時、開発費は単純に2倍に膨れ上がりました。売上も2倍になればそれで良かったのですが、右下がりの状態にも関わらず開発費は据え置きです。ですから、ここの効率化を積極的に進めなければなりません。
 今年度当社は、昨年度比66億円増の1148億円を連結売上目標に設定しました。でも開発部隊には、「売り上げがまったく伸びなくても、今年度予算の34億円の営業利益を出してみろ」と指示しています。売上高に頼って営業利益を出すという事業運営をしていると、売り上げが落ちた時には惨憺たる状態に陥ってしまいます。
 開発部門にはかなりキツイ要求だと思いますが、そういう努力をしてくれて結果的に目標通りの売上高が達成できたら、その分はすべて上積みになり、当社は成長路線に乗ることになります。

  開発側が、売り上げに頼らずに利益を出すための秘訣はありますか。

木内 特にこれというものはありません。ただ、開発費には見直すべきところがあります。当社はビジネスホン事業で世界的にも強く、それなりの事業構造で回っているため、私から見れば開発費にやや無頓着な部分があるように思えます。例えば、開発費を半分にするという目標を掲げたら、いろいろと取り組むべき課題が浮き彫りになってきます。
 他方で、「開発費を下げれば市場の要求に追随できない」という考えがあります。しかし、そういう積み上げ方式の考え方ではなく、「限られた開発費のなかで市場の要求に応える商品を生み出すには何をすればいいのか」を考えていけば、開発側で利益を出しつつ、魅力的な商品を市場に投入できるようになるでしょう。
(聞き手・藤田 健)

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