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2006年3月号
パナソニック コミュニケーションズ
取締役社長
藤吉一義氏
“画像通信機”で伸びるMFP
IPオフィスはv6で完成へ
グループ再編から3年。パナソニック コミュニケーションズが手掛ける固定通信機とイメージング機器がオフィスの必須アイテムになってきた。藤吉一義社長は「顧客企業のオフィス改革を実現する」と意気込む。
Profile
藤吉一義(ふじよし・かずよし)氏
1944年福岡県生まれ。67年3月九州大学工学部通信工学科卒業。同年4月九州松下電器入社。92年6月取締役に就任。94年6月常務取締役、96年4月取締役副社長。2003年1月、グループの事業再編で社名変更したパナソニック コミュニケーションズの副社長。同年6月副社長のまま松下電器産業の役員に就任。05年6月パナソニック コミュニケーションズの取締役社長に就任。現在に至る
松下グループの事業再編に伴って御社が再発足し、3年が経過しました。この間の通信市場の変化をどのように捉えていますか。
藤吉
3年前、「音声通信は今後携帯電話に集束し、固定電話はいずれなくなる」と言われていました。当社は固定通信機器事業を主軸に据えて発足しましたが、正直なところ、「この分野は将来展望を描くのが難しい」と感じていました。
ところが、この3年間で市場環境は劇的に変化しました。一番大きなことは、固定通信における急速なIP化の進展です。ADSLを契機に立ち上がり、今は光ファイバー回線へと移行しつつあります。
今後は携帯電話もIP化されていくでしょう。そうなると、固定系と携帯系の区別がなくなります。FMCの時代が来るのです。つまり固定電話はなくなるどころか、将来に向けてさまざまな可能性が膨らんできたのです。
御社のもう1つの事業の柱であるイメージング関連機器の形も大きく変化しました。
藤吉
従来FAXはスタンドアロンで通信するもので、コピーは複写するだけのものでした。ところが近年は、オフィスの省スペース化へのニーズもあり、複合機(MFP)が主流になってきました。これに伴って、書類をスキャニングするなど、画像データを扱うケースが増えました。そうなると、「ネットワークに接続して画像データをやり取りしたい」というニーズが高まるのは自然な流れでしょう。つまり、MFPに通信機能が不可欠になったのです。
ですが、世界中を見渡しても、通信とイメージングの両方の製品を手掛けているメーカーは少ないのが実情です。つまり当社は、この3年間で時代の先端を走る会社に押し上げられたのです。「面白い時代が来た」と思っています。
距離の壁を超える
顧客のニーズが、御社の標榜している「IPオフィス」につながったのですね。狙いを聞かせてください。
藤吉
オフィスの在り方は大きく変わりつつありますが、ポイントは2つです。
現在、広域展開をしている企業では、各拠点をどう結んで仕事をするのかが課題になっています。従来は社内出張を頻繁に実施していましたが、ブロードバンドインフラが整った現在もそれを続けるのはおかしな話です。
当社は「ゼロ・ディスタンス・マネジメント」と呼んでいますが、通信回線を使って距離の壁を越えて業務を遂行できる環境。これが現在のオフィスに求められていることだと思います。
ゼロ・ディスタンス・マネジメントを実現すれば、在宅勤務も可能になりますね。
藤吉
その通りで、育児中の女性などが働けるようになります。
もう1つは会社の組織論になりますが、米国にはPACE(Product and Cycle-Time Excellence)という製品開発のマネジメント手法があります。そのなかに組織の成熟度を測る指標があるのですが、レベル2まではピラミッド型組織、つまり従来の日本の縦割り型の組織に当たりますが、この形態では短期間での製品開発は困難です。
レベル3はプロジェクト運営型です。多数のプロジェクトチームが同時に動いており、それぞれの目的を達成したらそのチームは解散し、また次の新チームを編成するという組織形態です。これにより、良い製品をより早く生み出すことができるというわけです。
日本の企業には、レベル2と3の間に非常に大きな壁があるのが現状です。
レベル3への移行をオフィス環境の視点から考えれば、これまでのような島単位にデスクを固定していては、次から次へと生まれる社内プロジェクトには対応できません。「フリーアドレス」の実現が必要不可欠になるでしょう。
ゼロ・ディスタンス・マネジメントとフリーアドレス。この2つこそがIPオフィスで実現しようとしている環境なのです。
そうなると、「モバイル連携」も重要なキーワードになってきます。
藤吉
同じ松下グループにパナソニック モバイルコミュニケーションズがあります。松下電器の100%子会社同士ですので、特に制約もなく、自由に連携してお客様ごとに最適なソリューションを提供できます。
販売店を援護する製品作りを
英国のMZAという調査会社によれば、御社は100内線以下のビジネスホン市場で、2005年上期に世界シェア第1位を獲得しています。
藤吉
あまり知られていないかもしれませんが、当社はこれまでもビジネスホン、すなわち小型PBXを海外で積極的に展開し、ノーテル、シーメンス、アルカテルなどの有力メーカーとしのぎを削ってきました。05年の当社は好調だったという手応えは得ていましたが、今回の調査結果を見て、「激しい競争状態から一歩抜け出したかな」と思っています。
05年は、国内PBX/ビジネスホンメーカーにとっては苦戦が続いた1年だったと言えます。そうしたなかで好調を維持できた要因は何ですか。
藤吉
製品戦略はもちろんですが、当社のポジション取りも良かったのだと思います。
IP化の進展により、大規模ユーザーはPBXからSIPサーバーに移行し始めています。また、自社で資産を極力持たないようにするために、PBXを撤去してキャリアのIPセントレックスサービスを採用する企業が増えています。
しかし当社のメインターゲットである中小規模オフィスでは、IPへの移行はありますが、まだまだPBXがなくなることはありません。そこに対して、ユーザーニーズをきちんと捉えた製品を出し続けていけば、今後も十分な収益をあげられるでしょう。
今後、IPオフィスをさらに訴求していくうえで、特に期待する商材は何ですか。
藤吉
先ほどお話ししたMFPです。MFPはすでに、強力なメーカーがひしめく市場ですが、画像通信機ともいうべき、新たな領域が広がっています。そこは通信とイメージングの両方の技術を兼ね備えた当社の強みを最大限に発揮できる部分ですので、十分に食い込んでいけるでしょう。
IPオフィスを推進するためには、販売パートナーの役割もかなり重要になると思います。御社は通信系とイメージング系の両方の販売店を多く抱えていますが、今後販売チャネルはどのように変化するのでしょうか。
藤吉
MFPの時代になって、メンテナンスがかなり大変になってきているのは事実です。そうした状況で通信系の販売パートナーが、IPオフィスとして一括にお客様に対応するというのは、なかなかできることではありません。
他方で、イメージング系の販売パートナーが通信機器のサポートまで担当することも至難の業というのが実情です。
販売パートナーにも変わってもらわなければなりませんが、何よりわれわれもパートナーの方々が生きていける道を考え、そうした機器を提供できるメーカーになる必要があると思っています。
IPv6で遠隔保守を
御社の製品戦略の大きな特徴として、早くからIPv6対応を進めてきたことがあります。ネットワークカメラやMFPが代表的ですが、ここまで積極的に展開している理由を教えて下さい。
藤吉
IPv6のメリットはアドレスが飛躍的に増えることと、強固なセキュリティを実現できることです。
IPアドレス数については、一般的には家電等、これまでネットワークにつなげられなかった機器が接続できるようになる点に期待が集まっています。もちろんそれもありますが、当社が注目しているのはむしろ、各機器の部品1つひとつにまでアドレスを付与できることです。
例えばMFPです。現在はコピー枚数のカウントや定期点検等のために、その都度サービスマンが客先に赴いています。しかし各部品にIPアドレスが割り振ってあれば、ネットワークを介してリモートで機器の状態を常時監視できます。そして異常が発生したら、どの部分なのかがすぐに分かるので、素早い対応ができます。また、ソフトウェアのバージョンアップも簡単にできますので、管理担当者の手を煩わすことがなくなります。
セキュリティについては、IPv4環境でピアツーピアの通信をする場合、NAT越えの問題が発生します。かといってファイアウォールを撤去するわけにはいきません。IPv6になればこの問題も解決できます。
松下電器は「ユビキタスネットワーク社会の実現」と「地球環境との共存」という2つのビジョンを掲げています。このうちの前者は特に当社の使命だと思っており、IPオフィスが目指すところでもあります。
IPv6になれば世界中のどこに居ても、屋内に居ようが屋外に居ようが簡単にネットワークにつながり、メンテナンスも簡単。つまり、IPv6ネットワークになって初めて、IPオフィスが完成形になるのです。
顧客のオフィス改革を実現する
御社は今後、どんなメーカーを目指し、そのために藤吉社長はどのような舵取りをしていきますか。
藤吉
お客様のオフィス改革を実現できるメーカーです。
そのためには、当社の強みを活かすことはもちろんですが、弱みも強みに変えていかなければなりません。
18年前、当社の前身である九州松下電器がPBX市場に参入しようとした時、ビジネスホンとPBXは、中小企業向けと大企業向けに明確に分かれていました。当時、松下通信工業がビジネスホンを手掛けていましたので、当社はPBXを選択したのですが、大企業市場はすでに4大メーカーが寡占していました。
そこで、小型のPBXに着目しました。調べてみると、その領域には海外メーカー1社が参入しているだけでした。ただ、中間領域なので、ビジネスホンとの競争も意識しなければなりませんでした。
当社が開発したのはビジネスホンとPBXの機能を併せ持ったハイブリッド型で、接続する電話機は専用機だけでなく、市販のものからも自由に選べるようにしました。これが多くのユーザーに支持されたのです。これに対し既存メーカーは、電話機も含めひと固まりのシステムとして販売する形を構築していました。このため、電話機が売れなくなるというリスクを負ってまでわれわれに対抗してくることはありませんでした。
つまり、何も持っていないという弱みを逆手に取って、成功を掴んだのです。私はこれこそが戦略だと思っており、今後も実践していきます。
(聞き手・藤田 健)