●2期連続で営業赤字という非常に厳しい状況下での社長就任です。果敢な舵取りが今後求められていくわけですが、まずは社内に向けて、どのようなメッセージを発したのでしょうか。
二村 社長に就任して最初に言ったのは「早く“普通の会社”になろうよ」ということです。
普通の会社という言葉に込めた意味はいろいろありますが、例えば株主に配当金を出していない現状は、普通とは言えません。従業員にもいろいろと我慢してもらっていることがあります。
言い換えれば、早期の業績回復ということなのですが、「我々は普通ではない」と訴えることで、現在の危機的な状況を再認識してほしかったのです。
もちろん、普通の会社で満足するわけはなく、その後は“良い会社”を目指していきます。
●長く続けば、悪い状況にもどうしても慣れてしまいます。まずはそこを打破したうえで、改革に取り組んでいこうということですね。とはいえ、岩崎通信機の主力事業であるビジネスホンをめぐる環境そのものが悪化している中、早期の業績回復を図っていくのは並大抵のことではないとも思うのですが。
二村 確かに、ビジネスホン市場は縮小していくと考えています。
現在のビジネスホンがなくなるかと言えば、なくなりはしないでしょう。また、音声の伝達手段がなくなることも永遠にないはずです。しかし音声を伝達する手段は他にも出てきています。
従来のビジネスホン市場が縮小していくことは間違いなく、今と同じビジネスを続けていくだけでは成長できません。このことは、常に肝に銘じておく必要があります。
では、岩通はどこに向かって進んでいくのか。
現時点で考え得るベストのプランをまとめたのが、今年5月に発表した新中期経営計画「IWATSU value-up V6」です。
09年度に営業利益率6%
●2009年度を最終年度とする、この新しい中期経営計画では、09年度に連結売上高480億円、連結営業利益率6%という目標が掲げられています。06年度の連結売上高は371億6900万円、営業利益はマイナス2億5700万円だったことを考えれば、かなり高いハードルにも見えますが、どのように実現していくのでしょうか。
二村 情報通信事業においては、新規事業への挑戦、新規分野への進出がカギになります。
中期経営計画では「サービス利用料モデル」「アフィリエイト料モデル」「保守サービス料モデル」の3つの収穫逓増型ビジネスモデルの構築と書きましたが、その考え方を端的に表現すると、「ソフト売り」への移行となります。
ビジネスホンの世界では従来、ソフトウェアはハードウェアの付随品でしかありませんでした。ソフトでお金はもらえません。しかし、我々もソフトで利益を得る道を探していく必要があるのでは、という考えが根底にはあります。
●脱ハードを目指していくということですね。
二村 いえ、そうではありません。今後もハード売りが重要なことは変わりません。ただ前述の通り、市場自体の縮小もあって、ハードそのものでは十分な利益を確保できなくなってきています。
ネットワークカメラなどビジネスホン周辺のハードウェアを取り込むという手はもちろんあるでしょう。しかし、当社が今からネットワークカメラを開発しても薄利しか残っていないはずです。
(聞き手・土谷宜弘)
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