●2006年4月に日本法人を設立して1年半が経ちました。日本市場進出の狙いは何だったのでしょう。
チャン HTCはいわゆる「スマートフォン」メーカーの中で世界のリーダー的立場にあります。
日本のモバイル市場は、3Gユーザー数やデータ通信の高速化などにおいて世界の最先端を走っており、スマートフォンのようなデータ通信をメインとするデバイスやサービスを開発する環境としては最適です。今後急成長する市場だと考えて進出を決めました。
●世界の07年第1四半期におけるWindows Mobile端末出荷台数は約318万台。HTCはそのうち約80%のシェアを獲得しているそうですが、強さの理由はどこにありますか。
チャン 何よりも、多様な端末を市場に提供しているというところです。例えばスライド型やタッチパネルといった形状をはじめ、搭載機能や端末サイズなどあらゆる面でバラエティに富んだ製品を投入しています。
ユーザーのニーズは多彩ですから、ラインナップの多様さは、さまざまに異なるセグメントの需要を満たすことができ、それだけ多くのユーザーを取り込めるということです。
●HTCは1500人近くの技術者を抱え、研究開発に力を入れていると聞いています。技術的な観点から見た優位性についてどう捉えていますか。
チャン 我々は長年、Windows Mobileに特化する形で成長を遂げてきました。マイクロソフトとも戦略的なパートナーシップを組んでおり、技術力や経験を培ってきています。これが大きな強みです。
同時に、常に最先端の技術を取り入れることも心がけています。例えば、我々はクアルコムともパートナーシップを組んでおりますが、新しいクアルコムのチップが開発された際に、それを搭載した端末を最初に出すのは我々だと自負しています。
さらに強調したいのが、市場やキャリアのニーズに合わせて柔軟にカスタマイズを行っていることです。例えば、話題になっている「iPhone」の場合、キャリアは仕様が決まっている製品をそのまま使うしかありません。しかし我々の場合、一般的な製品は提案しますが、その上でキャリアの要望やニーズに合わせたカスタマイズを柔軟に行う姿勢です。HTCはキャリアにとっての戦略パートナーという立場を築いていきます。
このように、世界のトップキャリアなどのリーダー企業とパートナーシップを強固に築いていることも我々の競争優位性に繋がります。
●「iPhone」の話がでましたが、先日、独自UI(ユーザーインターフェース)「TouchFLO」を日本でも発表され、評判を呼んでいます。
チャン 「TouchFLO」はタッチパネル上を指先でスライドしたりなぞったりすることで直感的な操作を実現する画期的なUIです。ただのUIというだけではなく、ユーザーに快適な操作性を与えるというHTCの端末開発のコンセプトに沿ったものです。今後もさらに画期的な技術革新を続けていきます。
●HTCはスマートフォンに特化した専業メーカーという立場で伸びてきました。Windows Mobile以外のOSへの事業展開の予定はありますか。
チャン 我々のコアコンピタンスはスマートフォンにありますし、さまざまなデバイスの中でスマートフォンが最も今後の期待値が高いと思っています。今後もスマートフォンに焦点を当てていきます。
また、ガートナーの発表した調査結果によると、07年度第1四半期に発売されたPDA/スマートフォンに
搭載されたOSのうち62.1%をWindows CE(Windows Mobileを含むモバイル機器向けOS)が占めています。成長率も前年比64.4%と急成長しています(図表)。しばらくはWindows
Mobileに注力していくことになるでしょう。
キャリア端末とは異なる需要
●7月に、SIMロックフリー端末「HTC Advantage X7501」(X7501)および「HTC
P3600」(P3600)を日本に投入すると発表しました。キャリアの垂直統合型ビジネスが主流となっている日本において非常に新しい取り組みだと感じています。
(聞き手・池辺紗也子)
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