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2007年12月号

アッカ・ネットワークス
代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)
木村正治氏
WiMAX生態系の広がりに自信
ADSL/光とのシームレス化も視野

子会社のアッカ・ワイヤレスを主体とした「アッカ連合」で
2.5GHz帯の事業免許を申請したアッカ・ネットワークス。
両社の舵取りをする木村正治社長・CEOは
「WiMAXは無線サービスで水平分業型を実現する大きな木村ス。
オープン連携で新たなビジネスモデルを構築したい」と意欲的だ。

Profile

木村正治氏
(きむら・まさはる)
1970年4月日本アイ・ビー・エム入社。96年4月取締役ソフトウェア事業担当。以降、IBMアジアパシフィックとIBMコーポレーションへの出向を経て98年12月日本アイ・ビー・エム取締役マーケティング担当に。2000年4月常務取締役兼IBMアジアパシフィック・バイスプレジデント、02年10月常務取締役兼IBMビジネスコンサルティング代表取締役社長、03年7月常務執行役員、06年7月顧問。07年6月アッカ・ネットワークス最高経営責任者(CEO)、7月アッカ・ワイヤレス代表取締役社長を兼任、8月アッカ・ネットワークス代表取締役社長・CEOに就任

2.5GHz帯の事業免許申請を終えた今の感想を聞かせて下さい。5月15日の総務省による免許方針案が、御社の方針にも大きく影響したように感じました。

木村 当初は単独で手を挙げ、ルーラルエリアでのワイヤレスDSL的なサービスからスタートし、徐々に郊外都市や都市部に広げていくことを考えていました。
 周波数の割り当ても、20MHz幅で3つが有力視されており、我々もそうみていました。
 しかし5月15日の免許方針案で、第3世代(3G)移動通信事業者が単独では参入できなくなり、全国展開の周波数の割り当てが30MHz幅で2つになりました。
 そこで、我々が手を挙げる以上は、30MHz幅をしっかりと使って徹底的にサービスを展開すべきだと考えました。

事業免許の申請に際し、御社単独ではなく、連合を組む形態を取り、最終的にNTTドコモをメインパートナーに選んだわけですが、何が決め手だったのですか。

木村 方針案で3G事業者の出資が3分の1未満となっていたのを見て、「(3G事業者ではない)新規事業者である我々が真ん中に立ち、中立でしっかりとサービスを行うべきだ」と考えました。
 他方で「開設計画の認定日から3年以内に全国の人口カバー率10%以上」「5年以内に総合通信局の管轄エリアごとの人口カバー率がすべて50%以上」を実現しなければなりません。そうなると、従来の計画のように、ルーラルエリアから都市部へ徐々に展開するというわけにはいきません。
 当社が中心になって事業展開する体制で申請する。しかし我々には無線サービスの経験がないので、この面でしっかり協力していただけるパートナーは欲しい、という順番で考えました。
 そうした折、NTTドコモからアッカが提案している「グローバルスタンダードをベースとしたオープン・水平分業モデル」に賛同していただけるという話をいただき、お願いしました。
 もちろん、NTTドコモは国内最大の3G事業者ですから、これ以上ないパートナーです。

2012年の黒字化を目指す

事業計画を見ると、設備投資額は2015年までに累計2000億円となっています。この金額で可能なのでしょうか。

木村 NTTドコモと組んだことで、インフラ構築の効率はかなりよくなると思っています。また、WiMAXはグローバルスタンダードですから、設備の調達もスムーズに行えるとみています。

2009年3月から下り最大約40Mbpsのサービスを提供し始め、開始から3年後の2012年に単年での黒字化を達成する計画です。一部ではWiMAXサービスに懐疑的な意見もありますが、市場性をどのように見込んでいますか。

木村 まず直近に目を向けると、現在何かしらのモバイル接続用データ通信カードを利用しているユーザーが350万程度おられます。この方々がWiMAXサービスの立ち上がり期を支えるユーザーになっていただけると思っています。
 また、WiMAXのチップを組み込んだノートPCが08年から09年にかけて登場する予定であり、さらなる新規ユーザーのエントリーが期待できます。
 ただし、その後市場がどのように広がっていくのかをパートナーやユーザーに明確に示さないと、WiMAXはPCを接続するためだけのサービスになってしまいます。
 そこで我々は、WiMAXで広げていきたい世界を「モバイルWiMAX Ecosystem(エコシステム)」という名称で明示しています。
 端末系だけを見ても、WiMAXチップは今後ノートPCだけでなく、PDAや携帯ゲーム機、車載端末等多くのものに組み込まれていくでしょう。分野別では流通、製造、教育、医療、メディア・エンタメ・映像などへの広がりが考えられます。
 ただ端末がつながればよいといったものではありませんから、コンテンツやサービスも重要になります。このため、WiMAXサービスの拡大には中身を広げていく各分野のコンテンツプレーヤー、サービス提供者の方々との協業も必須です。
 このように我々は、WiMAXの新しい生態系のようなものを作り上げていきたいと考えています。

御社が特に期待するのはどの分野ですか。

木村 将来的に大きなボリュームが期待できるのは車載端末だと考えています。すでに多くの車にカーナビゲーションシステムが搭載されています。
 しかし、GPS以外は固定情報が主体であり、今後は地図の更新や駐車場の空き状況、停車した周辺のお店の情報などをリアルタイムで取得することが期待されます。WiMAXの移動接続性を利用すれば、このようなサービスも早期に実現できるでしょう。
 また、最近の鉄道では車内にモニターが設置され、ニュースやCMといった映像が流れていますが、これは定期的に配信されているものをダウンロードして使用していると理解しています。今後WiMAXでリアルタイムのニュースや災害・事故情報を流すことができれば、付加価値は高くなると思います。
 自動販売機でも同じようにモニター付きのものが登場していますので、同様のサービスが将来は可能になっていくと考えています。

エコシステムを実現していくために、今後も幅広い分野から出資を募るのですか。
(聞き手・土谷宜弘)
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