●これまでKDDIの法人部門は、湯浅さん率いるモバイルソリューション事業本部と、ネットワークソリューション事業本部に分かれていました。そこに9月から、グループ会社で固定系の通信サービスを提供していたKDDIネットワーク&ソリューションズ(KNSL)を統合しました。その意図を教えてください。
湯浅 KDDIの一番の強みを活かせる組織に変更したということです。モバイル、内線ソリューション、固定回線、直収電話、そしてそれらの相互間定額など、企業の宅内周りを含めて、通信関係をすべてワンストップでサービスできるのは今のところ我々だけでしょう。
今まで、モバイルと固定を分けて営業を行っていましたが、お客様のところで実際にお話をすると、それぞれ単独では物足りない部分がありました。
これからはモバイルソリューションを軸に、固定も含めた企業ネットワーク全体の中にモバイルを位置づけて提供していきます。モバイルと固定、両方を併せて1+1=3になるのがFMC(Fixed
Mobile Convergence)だと思っています。
●具体的にどのように営業体制が変わったのでしょうか。
湯浅 法人部隊は、我々FMC事業本部とICT事業本部の2部門体制になりました。ICT事業本部はデータ系ネットワークやデータセンター事業などを行っています。その他のモバイルと音声系ネットワーク、そしてモバイルソリューションをFMC事業部が取り扱うイメージです。
組織変更前と比べると、モバイルソリューションを扱う人員は倍増しました。それに加え、各県のKNSLの支店を利用し、全国ネットで営業展開ができるようになりました。
●営業体制の実態が大幅に強化されたということですね。KDDIは以前からFMCソリューションへ積極的に取り組んできましたが、いよいよ本格始動するわけですね。
湯浅 ようやくタイミングが来たということです。今はもうモバイルと固定を分ける時代ではありません。
固定通信として、メタルプラス電話や光ダイレクトといった直収電話を併せて提供し、無線LANで内線もカバーする。社外は携帯電話でフォローする。固定通信もモバイル通信もすべてKDDIがワンストップで提供し、さらに利便性を上げるソリューションを乗せて、どこにいても業務が効率的に出来る。そんなトータルソリューションが求められてくるでしょう。
我々は、固定モバイル融合のメリットを全面的に企業に使ってもらいたいと考えています。
100%導入の鍵は無線LAN
●個人市場が頭打ちになる一方で、法人モバイルはあと2000万の市場が残っているとも言われています。
湯浅 日本の常用雇用者が全体で3200万ほどいると言われている中で、現在の法人名義の回線は約1000万。つまり、2000万程度の市場は確かに残っているでしょう。
ただし、これは100%の従業員が会社契約の携帯電話を持つのが前提の話です。しかし今は、外回りの営業やサービスなど約30%程度の社員にしか携帯電話を持たせていないケースが多い。
この導入率を向上させる鍵となるのは無線LANです。無線LAN内線ソリューションを導入すれば、内勤の方も全員が携帯電話を持たないと電話が受けられないわけですから、導入率は100%に近づいていくでしょう。
そして、全員が携帯電話を持つようになったら、そこにASPやSaaSなどのモバイルソリューションを乗せて、シームレスな環境で業務アプリが使えるようにしていこうという考え方でやっています。
●まずインフラを作ってからアプリを乗せていくという考えですね。
湯浅 そうですね。我々は基本的に導入後もアプリケーション部分はどんどん広げていけるように全体のシステムを組んでいます。「ステップバイステップソリューション」と呼べばわかりやすいでしょうか。最初からいきなりすべてをガラリと変えてしまうと現場の抵抗感がある。まずは使う側にも優しい導入をして、慣れてきたら少しずつアプリケーションの幅を広げていくのがいいんじゃないでしょうか。
●湯浅さんは以前から「単なる安売りや料金競争はしない」とおっしゃっていました。基本通話料半額の割引サービスが各社から提供されるなど料金競争が続く中で、その考えは変わっていませんか。
(聞き手・土谷宜弘)
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