●2.5GHz帯BWA(Broadband Wireless Access:広帯域移動無線アクセスシステム)の審査が終了し、ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムの2社に免許が与えられました。審査過程を教えてください。
田中 今回、2.5GHz帯BWAの2つの枠に対して4社の申請があり、電波部としては初めての比較審査を行うことになりました。我々が審査を行う過程で最も気を使ったのは、可能な限り公正で透明性の高い審査を行うということです。
そのため、電波監理審議会において申請4社からの合計4回にわたるヒアリングを行い、計画内容を直接審議会に十分ご説明していただくプロセスを取りました。また、それとは別に11月末には総務省主催の公開コンファレンスを行い、200名以上の傍聴者の参加の下で、申請者の皆様に自由な意見交換の場を持っていただきました。
審査の過程においても、公平性を保つためA社B社C社D社と申請者の固有名詞を伏せた審査資料を作成し、2007年12月21日の最終審議会の段階まで、審議会へのご説明にはすべてその資料を使いました。最終的に審議会委員の方々が「A社とC社が適当ではないか」と判断を下した後に固有名詞をオープンにしたのです。21日の審査の過程では、直前に一部の申請者から提出された要望事項についても時間を大きく割いてご審議頂きました。
●審査上、大きなポイントとなったのはどこだったのでしょうか。
田中 11個の審査項目を事前に公開しており、その中で申請者間で差が付いた項目の評価が最終的な採否の分かれ目になりました。
もちろん、申請者の計画にはそれぞれ優れている点がありました。今回選に漏れたオープンワイヤレスネットワークは、ネットワークのオープン性において優位性があり、アッカ・ワイヤレスは新規性において優位性がありました。しかし、最終的には、サービス展開の広さ、基地局設置の確実性、財務的基礎、周波数有効利用のための技術などの項目において優位性が高かった残りの2社に軍配が上がりました。どれか1つが決定要素になったというわけではなく、あくまで総合点で免許事業者が決定されたということです。
MVNO実現が課題
●2.5GHz帯において、電波部としての今後の課題はありますか。
田中 今回は比較審査で2社に絞ったということもあり、審査の対象となった認定計画の進捗状況はしっかりフォローしていかなければならないと思っています。「模範解答で免許をもらったが、計画がその通りに実行されなかった」では、選に漏れた方々に大きな不満が残ってしまうでしょう。計画認定の条件にもその点は挙げています。
2つ目はMVNOの実現です。これはもともと審査項目の1つとして重視すると申し上げていたこともあり、各社の計画の中でも非常に大きな項目として位置づけられています。この点については、省内の関係課は移動通信課だけでなく「MVNO事業化ガイドライン」の整理という観点から事業政策課と、ネットワークの料金設定という観点から料金サービス課と相互に連携しながら、MVNOの促進に向けた取り組みを一層進めていくことになると思います。
●BWAにはどのような期待を持っていますか。
田中 まずは、携帯電話とは異なる新しいマーケットの開拓です。現在の携帯電話は音声を軸足に置いたものですが、BWAはもっとデータ寄りのサービスとして、従来にないまったく新しい端末やビジネスを切り拓いて新しいマーケットを創出して欲しいと考えています。
もう1つは、携帯電話のように事業者がすべてのビジネスを掌握する垂直統合型のビジネスモデルではなく、端末は端末、アプリケーションはアプリケーション、ネットワークはネットワークと、水平に階層をなした形でビジネスが展開する水平分業型モデルの実現です。現状の携帯電話では、垂直統合型のモデルの中でMVNO実施時にトラブルがあり総務大臣が裁定を行うようなことがありました。それとは異なるオープンなビジネス展開を期待しています。
●選に漏れた事業者からは、将来的にWiMAXに追加割り当てがあれば手を挙げたいという声も出ています。可能性はありますか。
田中 現時点でははっきりと申し上げられません。ただ、10月に携帯電話の事業化を断念したアイピーモバイルから2GHz帯の周波数が返上されており、その利用方法について12月から情報通信審議会において審議が開始されています。この周波数でBWAを行うことも議論に上ってくるでしょう。2GHz帯は、半年ほどの検討を経て利用方法が決定していくことになります。
(聞き手・土谷宜弘)
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