●2004年4月の設立からほぼ4年になります。具体的にどのような点で合弁のメリットが出ていますか。
大石 設立前、カシオ計算機と日立製作所は別々の会社として商品作りをしていました。しかし、特にソフトウェアは開発費の負担が大きく、共通する部分をそぎ落とすという意味で合弁の効果が出ています。
また、カシオは商品企画や応用技術を得意とするのに対し、日立は基礎技術やインフラ技術をグループで持っているところが強みです。お互いの強みを融合して、カシオブランド、日立ブランドとして製品にすることができています。
●NECとパナソニック モバイルコミュニケーションズも06年7月に合弁会社を設立しました。カシオ日立との違いはどこにあるのでしょうか。
大石 NECとパナソニックの合弁会社はプラットフォームやソリューション、半導体など、どちらかというと個別の機能を集約する統合です。
これに対し、当社は営業部門こそ別々になっていますが、事業所や工場も統合しており、完全に一体化した形で業務を行っています。スキームとしてはよかったのではないかと思います。
「W53CA」「W53H」で巻き返す
●07年度の上期は一時的に業績が落ち込みました。何が原因だったのですか。
大石 06年度までは、auのサービスと我々の端末がうまくかみ合った形で事業を展開することができていたのですが、07年度は第1四半期に一部モデルの不調と、一部デバイスの調達の不具合により業績が落ち込みました。
しかし7月以降は回復しています。GfKジャパンが発表する月次の販売データなどを見ても、「W53CA」「W53H」がauの上位にランクインしており非常に好調です。
W53CAはカシオのデジタルカメラ「EXILIM」のブランドを冠した「EXILIMケータイ」で、515万画素のデジカメを搭載しています。一方、W53Hは薄型テレビ「Wooo」にちなんだ「Woooケータイ」で、有機ELディスプレイを搭載した薄型のワンセグ端末です。この2機種で第2四半期の不調を挽回したいと考えています。
●こうしたブランド端末は他社も投入しています。ブランド重視の傾向は今後ますます強まるのでしょうか。
大石 そうですね。ブランド端末は、メーカーのブランドが持つ安心感、あるいはブランドの背景にある技術的な進化を付加価値として提供することができます。
当社でもメーカーのブランドが強く押し出されるジャンルに関しては、ブランドを積極的に活用して訴求していきます。具体的には、EXILIMでデジカメ、Woooでは映像系の強みをそれぞれ前面に打ち出しています。また、カシオの「G'zOne」は「タフネスケータイ」というネーミング通り耐衝撃性や防水性といったタフネスさが売りです。
各ブランドが独自の意味を持っており、それを明確にしていきたいと考えています。
これらのブランドをベースに事業の骨格を作ることで、ユーザーの安定的な確保につなげることができます。他方、収益性の高い端末を開発したり、一般的な端末も手がけていきます。事業の安定化を図るという観点では、ブランド化の傾向はますます強まると思います。
●残された市場として法人が注目されています。カシオ計算機は「カシオペア」などPDAで実績がありますが、法人向け端末への取り組みはどうなっていますか。
大石 一口に法人向け端末と言ってもいろいろです。当社ではG'zOneモデルに法人向けの機能を追加した「E03CA」を提供していますが、運輸業界など外で仕事をされる方の間でその頑丈さが高く評価されています。
これに対し、大きなディスプレイとキーボードを搭載したPDAタイプのスマートフォンについては検討している段階です。日本は一般の携帯電話が高機能で、ビジネス層にも普及しています。携帯電話が通話中心の国では、メールやブラウザを利用するのにPDAを使うようです。
一般の携帯電話に比べるとスマートフォンの市場規模はまだまだ小さいので、静観しています。ただ、カシオ計算機にはPDAの実績があり、十分な開発ノウハウを持っているので、いつでも取り組める体制はできています。
(聞き手・土谷宜弘)
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