●現在の通信市場、特に坪井さんの担当である企業向け市場に関して、どのように見ていますか。
坪井 光回線やブロードバンドへの移行が進んできました。また、従来野放しの状態だった企業内での携帯電話の利用をしっかりとマネジメントしていこうという動きも出てきました。そういった新しいインフラの活用が、簡単に言えば“普通に”行われるようになってきています。
我々ベンダーとしては、そのインフラの上にどのようなソリューション、サービスをつなげていくのかという部分を、ユーザーに対してしっかりと伝える必要があるでしょう。
IP化をもっとクリエイティブに活かす流れを作らなければなりません。通信の領域が企業活動に直接貢献するためのアプローチ、情報化投資とコミュニケーションをもっと連携させていくような流れを起こさない限り、市場の成長はありません。
●市場は「通信コストの削減」をベースとした動きにとどまっていて、未だ情報システムとの連携も含めた大きな動きにはなっていません。
坪井 ただ、新しい技術を取り込もうという意思は強く感じられます。大手企業中心ではありますが、IP化の比率は高まっている。また、中小規模向けに「IP&モバイル」をコンセプトとして投入したビジネスホン「IPstage
MX/SX」も抵抗感なく受け入れてもらえています。浸透してきたという実感があります。
そこで、「IPコミュニケーション」をもっと広い意味で考えるべきなのです。
情報システムやコンタクトセンター、ビデオ会議やセキュリティシステムなどと連動して企業活動をより広い領域で支える。「ユニファイドコミュニケーション」(UC)という概念もこれに含まれますが、もっと幅の広いビジネスにしていかなければなりません。PBX市場のシェアの取り合いから脱して、市場全体を広げていくことが必要なのです。
"満を持して"UCへ
●1月に「ユニファイドコミュニケーション戦略」を発表されました。そこで強調されていたのは、企業が競争優位を確立するためにコミュニケーション分野が大きく貢献できるということでした。
坪井 言うまでもなく、競争優位を確立するための情報化投資は幅広い企業で行われてきました。ERPやSFA、CRMなど、個々のシステムでは成功している企業もたくさんあります。
ただし、それをさらに活用するためにはコミュニケーション環境の改善に目を向ける必要があるということです。企業内のコミュニケーション、それからユーザー企業とその顧客との間のコミュニケーションのレベルを引き上げることで、情報化投資がさらに生きてくるのです。
●コミュニケーション投資により、企業を組織的に強化しようということですね。ユーザーの意識もそのように変わってきているのでしょうか。
坪井 IP化の進展にあわせて、ユーザー企業内におけるコミュニケーション分野の所管が総務部門から情報システム部門へ移行しています。つまり、コスト削減に対する意識の高い部門からROI(投資収益率)を指標として重要視する部門へと、我々のターゲットが移っているのです。
最近、各ベンダーが一様に提唱しているUCという考え方は、方向性としてその流れに合っている。OKIは、このUCへの取り組みを、業界初のオフィス向けCTI「CTstage」を発売した1996年から始めていました。
その後、IPテレフォニーサーバ「SS9100」やIP-PBX「IPstage」シリーズなど、一貫したコンセプトの下で製品を開発してきました。そして今回、SS9100とIPstageのSIP連携が可能になった。SS9100を中心としたSIP連携で、IPコンタクトセンタやビデオ会議も含めて個々の製品がシームレスにつながる環境が実現したのです。
これまでの12年間にわたる取り組みによって、UC環境を提供するOKIの製品体系がしっかりと揃いました。そして、ユーザーの意識も変わりつつある。そこで満を持して、先日の戦略発表では、情報化投資と連携したコミュニケーション投資の必要性を改めてお伝えしたわけです。
SIP連携こそ重要
●UCは現在、各ベンダーが重要なテーマとして打ち出しています。その中で、OKIの強みはどこにあるのでしょうか。
坪井 まずIPstageでのSIP連携、これが非常に重要なポイントです。
これまで、特に中小企業においては「IP化=通信コストの削減」でした。IP化の本来の意義、内線IP化によるアプリケーション連携が可能になる製品を我々ベンダーが提供しきれていなかったのが、その要因の1つでしょう。
大企業では付加価値の高いコミュニケーションが使えるのに、中小はただの電話でよいはずはありません。IPstageでのSIP連携によって、さまざまな企業のサイズにきちんと合ったUC環境を提供することができます。
●どのような形態にも対応できるのが強みだということですね。
坪井 中小企業から大企業まで、またモバイル活用やテレワークも含めて、多様なオフィス形態・規模に柔軟に対応でき、かついろいろなマイグレーションパスで使えるモノにする。そうして初めてIPやSIPが生きてくるというのが私の考え方です。
既存設備をオールリセットして、新たに大規模なIPセントレックスを構築しましょう、という考え方では、ユーザーとの間に大きなギャップが生まれてしまいます。
しかし、IPstageがSIPでつながれば、例えばある拠点だけをまずIP化することができます。後々SS9100で大規模なシステムを構築するにしても、既存のIPstageは無駄にならない。小規模拠点からスタートして、ソフトフォンやモバイルを活用しながら徐々にステップアップしていくことができます。いろいろなサイズ、多様な考え方で使えるわけです。
その上で、SS9100用のソフトフォンとして作られ、市場の声を反映しながら進化してきた「Com@WILL」がIPstageでも使える。洗練された操作性や利便性を中小企業にも提供できることも大きな強みです。
このCom@WILLはAPIを公開していますが、さらに幅広いパートナーとつながることで、アプリ連携の領域を広げていきます。
(聞き手・土谷宜弘)
続きは本誌をご覧下さい