●2003年1月の松下グループの事業再編に伴って再発足して5年が経過しました。この5年間の足跡を振り返って、どのように評価しますか。
赤峰 5年前、私は九州松下電器の経営企画室室長として再編の当事者でした。
当時、新会社である当社は、「通信とドキュメントの融合を図り、ホーム、SOHO、オフィスに対してコミュニケーション&イメージングのネットワークソリューションを提供しよう」というコンセプトでスタートしました。
それから5年が経過したわけですが、必ずしもそのコンセプトを実現できたとはいえません。
通信事業はそれなりの進化を遂げ、一応の成果を収めていると思っています。
しかし、ドキュメント事業に関しては、松下グループとして、これまで20年以上手掛けてきたわけですが、歴史の割には業界でのシェアは上がっていません。私は新たな事業戦略が必要だと考えています。
●具体的に、どのように変えていくのですか。
赤峰 まず、従来の製品ラインナップは大切にし、これまで通り注力していきます。
そのうえで、ドキュメント事業を発展させるために、我々が得意とする領域を確立する必要があると思っています。
固定通信事業などにもいえることですが、当社がより強みを発揮できる領域はSOHO・小規模事業所です。今後は、この領域向けのMFP(複合機)で、業界内でさらに存在感を出せるよう、取り組んでいきます。
再び成長軌道に乗せる
●次の5年、さらにその先の御社の発展に向けて社長のバトンを受け取ったわけですが、新社長としてのミッションについてはどのように考えていますか。
赤峰 社長就任に際して私が社員に発信したメッセージは「この会社を大きく成長させる」ことと「従業員を守り切る」という2点です。その背景には、当社の現状に対する危機感があります。
現在の当社の経営状況は決して磐石とはいえません。当社が取り組んでいる新規事業を見渡してみても、小粒なものは多くありますが、今の電話関連事業に匹敵する大きな柱に成長しそうなものをまだ模索している段階です。
社長として私に与えられた時間はそれほど長くはないと思いますので、その間に再び当社を成長軌道に乗せることが私のミッションです。
●4月の社長就任以降、国内の事業所だけでなく、海外拠点にも精力的に出掛けたと聞きました。
赤峰 そうです。そこで感じたのは、「個々の現場は非常に頑張っているな」ということです。ただ、それが成果に繋がっていないのです。
私は社長として、現場の頑張りが成果に繋がるような舵取りをしなければならないということを痛感しました。
●舵取りのポイントは何ですか。
赤峰 「選択と集中」です。当社は数多くの製品を手掛けているので、なかには赤字の製品カテゴリもあります。現在、全カテゴリの見直しをしている最中ですが、将来的に収益が見込めないものに関しては撤退するつもりです。そして、収益が見込める事業に経営のリソースを集中させます。
また、現場力向上にも力を入れます。現場がPDCA(Plan:計画・体制整備、Do:実行、Check:検証、Action:改善行動)サイクルをきちんと回すようにします。
IP対応の新製品を準備中
●主力のPBX/ビジネスホン事業では、06年1月に投入し、今年3月に機能向上を図ったデジタルビジネスホン「La Relier」(ラ・ルリエ)は、ドアホン連携を実現するなど、SOHO・小規模事業所に向けた御社ならではの付加価値を備えた製品だと思います。
赤峰 意欲的な製品です。しかし販売実績では、もちろん厳しい市況の影響も大きいのですが、期待値に届かず伸び悩んでいるのが実情です。
当社は競合他社に比べてIP対応への取り組みが遅れており、それが国内市場での苦戦に繋がっていますので、来年早々には他社に負けないIP対応製品を投入する予定です。
今後はIP-PBXを中核にし、そこにすべての製品を繋げていくことを当社の基幹戦略としています。このため、IP-PBXの重要性がこれまで以上に高まると思います。
●詳細な計画を教えて下さい。
赤峰 ホームからSOHO、中規模事業所くらいまでがターゲットになります。特に、SOHO市場でナンバーワンのコミュニケーションソリューションベンダーを目指して取り組む方針です。
当社にはMFPやネットワークカメラ、高速PLC、電子黒板など豊富な製品群がありますし、松下グループにはPCやプラズマディスプレイ、プロジェクターというように数多くの製品があります。IP-PBXを核にし、それらを上手くパッケージ化してユーザーにソリューションを提供していきます。それこそが当社の強みだと思います。
(聞き手・藤田 健)
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