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2008年10月号

NECネッツエスアイ 代表取締役執行役員社長
山本 正彦氏
ノウハウの「見える化」で業績好調
NGN技術者1300人を育成

企業向け新ソリューション「EmpoweredOffice」が
目標を超える売上を達成するなど、堅調な業績が続くNECネッツエスアイ。
「必要なのは、自分たちの価値を『見える化』し、
お客様に提案できるところまで育てていくこと」と山本正彦社長は話すが、
その要因の1つは自社の持つノウハウの“再発見”にあったようだ。

Profile

山本 正彦氏
(やまもと・まさひこ)
1947年、三重県津市生まれ。70年3月に京都大学工学部電子工学科を卒業後、同年4月に日本電気入社。98年6月同社交換移動通信事業本部ビジネス通信事業部長、2001年4月同社NECネットワークスIPネットワーク事業本部長、同年6月同社NECネットワークス執行役員などを経て、04年4月に同社執行役員常務。06年4月にNECネッツエスアイ顧問。同年6月に同社代表取締役社長に就任

企業向けネットワークソリューション事業や、通信キャリア向けの設備工事業などを手がける御社ですが、市場環境が決して良くはないなか、2007年度の売上高は前年度比1.4%増の2582億円、売上総利益は同6.9%増の356億円と、堅調な業績を収めています。今年度の第1四半期についても、売上高は前年同期比7.4%増の474億円、売上総利益は同3.2%増の58億円と好調ですね。

山本 社長に就任して2年が過ぎましたが、これまでのところは順調に来ることができました。しかしちょっと今、先が読みにくくなっています。
 一番のリスクは、景気に減速感が出ていることです。私どものお客様である企業や通信キャリアの設備投資動向は、景気に敏感に反応します。幸か不幸かネットワークというのは長持ちしますから、「設備投資は1年くらい伸ばしてもいいだろう」と判断されるケースが今後増える可能性はあるでしょう。
 また、NGNの加速が遅れており、通信業界の先行きそのものも不透明感が増しています。日本に限ってみれば、NGNによって通信インフラ部分の市場がこれから大きく成長していくことはありません。こうしたなか、NGNではサービス分野の市場拡大が期待されているわけですが、どのように進展するのか。私はまだ見え切れていません。

NGNラボを今年2月開設

通信キャリア自身もまだ見えていないかもしれません。皆さん努力していますが、なかなか難しいですね。

山本 1つ冷めた見方をすると、NGNが既存サービスの置き換えにとどまっては、市場全体の成長はありません。例えばですが、従来SIerが提供していた部分をNGNではSaaSでキャリアが提供するというのでは、ビジネス全体の拡大にはつながりません。市場全体が成長するクリエイティブな方向へとNGNには進んでほしいと考えています。

今年2月、キャリアグレードのネットワーク機器やIMS(IP Multimedia Sub-system)、SDP(Service Delivery Platform)などを揃えたラボ「NGN Laboratory」を開設されました。NGNを単なる既存サービスの置き換えに終わらせないための取り組みは、御社でも始まっています。

山本 小さなラボではありますが、狙いはいろいろあります。まずは人材の育成です。NECグループの一員として私どもはプラットフォーム系を中心にNGN構築に携わっており、NGN対応エンジニアを2010年には1300人体制に拡大するという目標を掲げています。
 また、当社の体験型ショールーム「EmpoweredOffice Center」の隣にこのラボを作ったことも味噌の1つです。EmpoweredOfficeとは、オフィスワークに関わる「コミュニケーション」「インフォメーション」「ファシリティ」の3つの要素を効率的に使いこなし、企業力アップを実現する当社の企業向けソリューションの総称です。NGNの構築という大きな話はNEC本体との連携の中で取り組んでいくものですが、NGNの利活用については、企業のお客様を多く持つ我々の目線でできることがたくさんあります。今後、EmpoweredOfficeの中にNGNを利活用したメニューを加えていくことを考えています。

PBX市場は「期待すると苦戦」

企業ネットワーク市場、とりわけPBXなどの音声システム市場の現状についてはどう見ていますか。IP化が思うように進まず、冒頭に話題に上った景気以前の問題として、苦戦を強いられているようにも見えます。

山本 成長を期待すると苦戦しますね(笑)。
 良く言えば「安定している」、悪く言えば「成長性に乏しい」市場と思っていますから、私は悲観的には見ていません。電話は絶対に必要なものです。大化けもしない代わり、企業数が減らない限り、この市場は減らないと考えています。

確かにIP化にしてもNGNにしても、我々が急激な進展を勝手に期待し過ぎた面は大いにあります。NECは「UNIVERGE SV8000シリーズ」をリリースしましたが、IP-PBX市場で企業ユーザーの支持を集めているのは、レガシーとIPの両方の機能を兼ね備えたハイブリッド型です。

山本 企業には、過去のさまざまなネットワーク資産が蓄積されています。新しいビルに移転するのでなければ、配線などすべてを置き換えるのはコスト的に非常に大変です。IPへの移行は進んでいきますが、過去の資産を確実に活かしながらリニューアルしていくという流れとなるでしょう。

IP化への過度な期待はできないとなると、成長のポイントはどこにあるのでしょうか。

山本 社長に就任する前後、いろいろと勉強をしましたが、やはりお客様にきちんと付加価値を提供しているSIerが強いんですよね。
 ネットワーク系のSIの場合、お客様とは非常に長いお付き合いをするわけで、その中でどのようなバリューをお客様に提供できるのか。提案の幅を広げていくことが重要だと思っています。EmpoweredOfficeも、こうした発想から生まれました。
 よく社内で話すのですが、我々はお客様のオフィスの天井裏と床下については、非常にしっかりとしたバリューを提供してきました。しかし、それで満足していては「もったいないよね」と。我々の経験や技術というものはオフィスの真ん中――お客様の目に触れるところでも活きるものです。
(聞き手・土谷宜弘)
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