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2008年12月号

マイクロソフト
代表執行役社長
樋口泰行氏
クラウド時代へ「S+S」戦略推進
次期OCSで日本のニーズに対応

「Windows Azure」でマイクロソフトは
クラウドコンピューティングに大きく踏み込んだ。
日本法人の樋口泰行社長は
「PCとモバイル、クラウドの三角形でお客様に付加価値を提供したい」
と日本における事業展開について抱負を語る。

Profile

樋口泰行氏
(ひぐち・やすゆき)
1957年兵庫県出身。80年大阪大学工学部卒業、松下電器産業入社。91年ハーバード大学経営大学院卒業。92年ボストンコンサルティンググループ入社。94年アップルコンピュータ入社。97年コンパックコンピュータ入社。2002年合併に伴い、日本ヒューレット・パッカード執行役員インダストリースタンダードサーバ統括本部長に就任。03年同社代表取締役社長就任。05年ダイエー代表取締役社長就任。07年3月マイクロソフト代表執行役兼COO就任。08年4月代表執行役社長兼マイクロソフト コーポレーションコーポレートバイスプレジデント就任、現在に至る

ブロードバンド化などを背景に、ネットワーク側でコンピュータ処理を行う「クラウドコンピューティング」が非常に大きな潮流となっています。マイクロソフトも以前からこの流れに対応してきましたが、今年10月に米国で開催した「Professional Developer’s Conference(PDC)」でクラウドコンピューティング向けの総合プラットフォーム「Azure Service Platform」を発表しました。クラウドの世界にこれまで以上に深く踏み込んだ印象を受けています。

樋口 そうですね。Windows Azureはクラウド向けのプラットフォームであり、ストレージとコンピューティング、ネットワークの基盤サービスを提供する予定ですから、パッケージやライセンスでソフトウェアを提供し、オンプレミス(自社運用型)でインストールして使っていただくという当社の従来のビジネスモデルをある意味、自己否定することにもなります。
 しかし、ソフトウェア開発の総責任者(CSA)であるレイ・オジーは、世の中がこれからクラウドコンピューティングに向かうことは確実だと判断し、お客様のニーズに応えるためにも先手を打ったのだと思います。

樋口社長も先日、パートナー向け総会「Microsoft Japan Partners Conference 2008」で、クラウド時代にはマイクロソフトがかねてより進めている「Software + Service(ソフトウェア+サービス)」戦略がいっそう重要性を増すとの見解を示されましたね。

樋口 ネットワークが進化して帯域幅が広く安価になり、しかも信頼性が高まったことで、回線経由でソフトウェアを提供可能になったということが背景にはあります。
 マイクロソフトはこれまでPCを中心に成長してきました。しかし、PCセントリックなだけではお客様に対して、十分な付加価値をもたらすことが難しくなっています。従来からあるPCがもたらす価値にプラスして、クラウドサイド(インターネットサイド)の付加価値と連携させていくことが不可欠です。
 ですから今後は、クライアントサイドとクラウドサイドがシームレスにつながっていくことを前提にソフトウェア開発に取り組んでいきます。これにモバイルを加えて、PCとモバイル、クラウドの三角形によって、お客様にどう付加価値を提供できるかを考えていこうとしています。

つまり、ソフトウェアの保有か利用かという二者択一ではなく、融合により価値を追求するということですね。

樋口 ソフトウェア+サービスの形態には、従来のソフトウェア保有型とSaaSによるサービス提供に加えて、主に開発者が新たな価値を生むためのプラットフォームを提供するビルディングブロック型、セキュリティ機能やソフトウェアの更新をネットワーク経由で行うアタッチサービス型もあります。
 こうしたさまざまなバリエーションを実現していくことが我々のコンセプトです。

他の事業者にもSaaS提案

SaaS型ビジネスに関して、昨年6月にKDDIとの包括提携を発表しましたが、その進捗状況について教えてください。また、NTTグループがNGNをSaaS基盤として提供しようとしていますが、今後、他の事業者とも提携する予定はありますか。

樋口 KDDI様は今年3月から、auの携帯電話上で「Office Outlook 2007」のメールやスケジュール機能を統合し、PCとau携帯電話の両方から使うことができる法人向けサービス「KDDI Business Outlook」を提供しています。
 KDDI様は固定電話と携帯電話、ブロードバンドを1社で手がけられていることに加えて、法人市場でも実績を持っていらっしゃることもあり、包括提携に至りました。
 しかし、KDDI様との提携は排他的なものではありません。SaaS提案におけるパートナー様との協業は当社のS+S戦略でも非常に重要な位置づけです。KDDI様だけでなく他の事業者も含めてSaaS提案を強化するとともに、自社でも取り組んでいきます。

マイクロソフトのユーザーは、Office製品がいつSaaS型になるかという点に関心があるようです。

樋口 そうした提案は早い段階から出していくつもりです。どこからどのようなデバイスを使ってもデータを同期できるようなソリューションは、ビジネスの世界ではかなり早くから出てくると思うので、マイクロソフトも提供していきたいと考えています。
 まだベータ版の段階ですが、「Microsoft Office Live Workspace」のようなWebベースのサービスも出てきています。

日本の多様なニーズに応える

クラウドコンピューティング時代には、サービスの受け取り手としてスマートフォンの役割がますます重要になることが予想されます。Windows Mobileの戦略や取り組みについて、どのように考えていますか。
(聞き手・土谷宜弘)
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