●日本でもiPhoneをはじめAndroidやWindows Mobileなどスマートフォンのラインナップが充実してきました。現在のスマートフォン市場をどのように見ていますか。
上野 日本の携帯電話は他国よりも進んでいながら、他国では使えない機能のために「ガラパゴス」と評されています。その点、日本を含め世界中どこでも使えるスマートフォンに紐付いてマーケットが活性化するのは非常に喜ばしいことです。
●BlackBerryは日本でスマートフォンがまだ珍しかった2006年9月に発売され4年になります。どのような点で他のスマートフォンと差別化を図っていくのですか。
上野 さまざまな機種が発売されている中で、世界中どこに行っても同じ機能を同じように使えるという、本当の意味で均質なサービスを実現しているスマートフォンはBlackBerryだけです。世界175カ国以上で550以上の通信事業者がBlackBerryのプラットフォームとつながり、海外でも日本国内と同じサービスや機能をそのまま使えます。
また、米国のオバマ大統領をはじめとする政治リーダーやビジネスリーダーに愛されているのも特徴です。
こうした方々に愛用されているのには理由があります。第一に、使い勝手がよいことです。他社のスマートフォンや携帯電話を使用したお客様からも「メールを打ったり、読んだりするにはBlackBerryが一番使いやすい」と評価していただいています。
第二に、強固なセキュリティです。米国の大統領は従来、携帯電話やPDAを持つことを禁じられていました。たった1通のメールが国家の安全保障を揺るがすこともあり、もし流出でもすれば大変な事態になるからです。
BlackBerryはもともと各国の政府機関や軍事機関にも採用されるほどのセキュリティポリシーを満たしていたのですが、さらにセキュリティレベルを高めた上でオバマ大統領が所有することを認められました。
今ではほとんどの携帯電話やスマートフォンに搭載されているデータ遠隔消去機能をBlackBerryは他社に先駆けていち早く導入したほか、ハッキングなど外部から侵入できない仕組みになっています。
●つまり、信頼性の高いコミュニケーションツールとして他を寄せ付けない強みがあるということですね。
上野 そうです。携帯電話の電波の圏外にあってもデータ保護のためにデータ消去機能があるのはBlackBerryだけです。その他にも、無線のネットワークを考慮し、添付ファイルのデータ容量を圧縮して送信できます。先日、当社にて検証を行い3.4MBのファイルを添付したメールをBlackBerryで送ったところ、0.2MBと約15分の1になっていました。
この結果はあくまでも一例であり、お客様の環境にもより実際の値は変動しますが、データ容量が大幅に圧縮されることは確かです。そのため、よりスピーディにデータを送受信できるというメリットがあります。
また、無線LANとFOMA、Bluetoothと3種類の無線方式を同時に使えます。無線LANでデータを受信しながらBluetoothヘッドセットで通話するといったことができるので、場所を選ばず利用することが可能です。
アプリを日本向けに提供
●各国の通信事業者やメーカーが自社でスマートフォンのアプリケーションストアを立ち上げています。アプリケーションへの取り組みはどうなっていますか。
上野 今年2月に開催された「Mobile World Congress 2010」の基調講演で、リサーチ・イン・モーション(RIM)本社CEOのマイク・ラザリディスが「Super Apps」という新しいコンセプトを発表しました。
従来の携帯電話向けアプリケーションは、例えば位置情報なら現在地を通知するなど単体の目的を果たすものでしかありませんでした。これに対し、Super Appsは複数のアプリケーションを連携させ、位置情報だけでなく周辺の交通情報も表示することができるというものです。
すでに日本でも、BlackBerryに表示されたパワーポイントをプロジェクターに投影してプレゼンテーションに活用したり、商品カタログのデータをバーコードリーダーで読み取り、Bluetoothを使って簡易プリンターで印刷するといったアプリケーションがあります。今後はこのようなアプリケーションを充実させていきます。
また、米国とカナダ、英国で「BlackBerry App World」を展開していますが、RIMジャパンではこれらのアプリケーションを日本向けに提供していくことも考えています。
●法人向けモバイルソリューションを強化するために、ITベンダーやSIerを活用することも必要なのではありませんか。
上野 法人市場は我々にとって重要な橋頭堡です。RIMジャパン単独ではお客様のすべてのニーズにお応えすることはできないので、ITベンダーやSIerとの連携を強化したいと考えており、すでにIBMと一緒にセミナーイベントを開催するなどの取り組みを行っています。
ITベンダーは各社とも顧客に対するノウハウをお持ちですし、エンドユーザーの要求していることも熟知されています。我々の持っているBlackBerryの技術情報はどんどん提供し、ソリューションの実現に特別なコストがかかるような場合には共同で開発することも十分にありうると思います。
(聞き手・土谷宜弘)
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