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2010年6月号

富士通 ネットワークサービス事業本部長 兼
映像ネットワークサービス事業部長
香川進吾氏
M2MやUCをフル活用し
リアルワールドのICT化へ

「結局、今後起こるのはリアルワールドのICT化」――。
今年4月にネットワークサービス事業本部長の任に就いた
香川進吾氏は、M2MやUC、映像などのネットワーク技術を
最大限に利活用することで、物流、農業、医療など、
現場であるフロントオフィスのICT化を推進していく考えだ。

Profile

香川進吾氏
(かがわ・しんご)
1958年3月8日生まれ。81年3月、電気通信大学電気通信学部経営工学科卒業。同年4月、富士通入社。2000年12月同社システムサポート本部第二ネットワークインテグレーション部長、02年4月同IDCシステム部長。その後、04年6月ネットワークサービス事業本部ネットワークソリューションセンター長、06年6月同FENICSシステム統括部長、07年11月ネットワークサービス事業本部長代理兼映像ネットワークサービス事業部長を経て、2010年4月にネットワークサービス事業本部長兼映像ネットワークサービス事業部長に就任。現在に至る

クラウド、LTE、Androidなど、ICT業界ではさまざまな潮流の勢いが増していますが、こうした動きに伴い、ICTの利活用の仕方も新しいフェーズに入ろうとしているように思います。どう見ていますか。

香川 ICTをめぐる近年の動向として大きいのは、まず端末の多様化です。単にネットブックやスマートフォンという話ではなくセンサー系――血圧計や自動車、家電など、「こんなものまで?」と思うものまでネットワークにつながるようになってきました。
 片やクラウド化も進展しています。総務省は2015年までにクラウド市場は現在の約5倍の2兆円規模へ拡大すると予測していますが、クラウドを使うということは結局、ネットワークでつなぐ必要があるということです。そのネットワークの領域では、光ファイバーはもちろん、WiMAX、LTEと広帯域化・無線化が進んでおり、さらに通信ノード同士が自律的にネットワークを構成する「アドホック・ネットワーク」についても実用化が少しずつ見えてきました。
 こうしたなか、富士通に現在どんな相談が寄せられているかというと、例えばタクシーの走行情報の活用や、ヘルスレコードを基に健康・治療・介護までが連携した終身対応、スマートコミュニティーによるCO2削減などです。いずれも特定の業種に特化した、従来型のソリューションでは解決できないもので、ICTの利活用シーンは大きく広がろうとしていると感じています。

業種特化では解決できないとはどういう意味ですか。

香川 例えば、クルマに組み込んだセンサーから得られる道路情報や天候状況は、クルマの開発自体には役立たないかもしれませんが、物流会社や情報サービス会社にとっては役立ちます。このように、データの利用価値というものがクロスオーバーしていることがポイントで、業種を超えたサービスの融合によるイノベーションの促進を考えるうえでの起点になっています。

なるほど。しかし、業種を超えてさまざまなプレイヤーがデータを活用するとなると、何か連携のための基盤が必要になりますね。

香川 そこで、異業種向けのアプリケーションが相互に連携しあえるサービス・プラットフォームというものを考えています。これは、ネットワーク経由でクラウド上に収集されたデータを相互に連携させながら、お客様のアプリケーションに活用していくための基盤です。従来の情報システムに対する入力は人間が行うか、他のシステムが書き出したデータが中心でした。しかし、この新たなサービス・プラットフォームではそれらに加えて、センサーが集めたリアルタイムな情報を、さまざまな業種のプレイヤーが相互に利用することでイノベーションが促進されることを目指しています。

業種を超えてサービスを融合させるためのICT基盤を富士通が提供しようというわけですね。具体的な取り組みはもう始まっているのですか。

香川 例えば、スマートメーターへの適用に向けて、こんな取り組みを行っています。宅内の電力メーターの中に無線通信ノードを組み入れ、無線通信ノード同士がアドホック・ネットワークを構成することで、宅内の電力使用量を自動収集するというものです。この事例では、富士通が開発したアドホック・ルーティング方式「WisReed」を使うことで、数百規模の無線通信ノードが自動的につながります。従来のアドホック・ルーティング方式では50ノード程度しか接続できませんでしたので、圧倒的に収容効率が高まります。
 また、別の事例では、車載端末が集めたエンジン回転数や急加速/急停止などの情報をモバイル通信によりリアルタイムに把握し、運行支援や動態把握に活用する取り組みを行っています。さらに、携帯電話を使ったメタボ予防指導など、実現に向けた第一歩をすでに富士通は踏み出しています。

富士通ならではのUC機能

ここからは富士通全体ではなく、ネットワークサービス事業本部の戦略に焦点を絞ってお聞きしたいと思います。まずはこの1年の成果を振り返りたいのですが、昨年度は次の2つが大きなトピックでした。多様な端末・アクセス回線から安全に社内ネットワークにリモートアクセスできる「FENICS II ユニバーサルコネクト」の投入と、シスコシステムズとのユニファイドコミュニケーションにおける戦略提携です。

香川 FENICS II ユニバーサルコネクトは昨年11月に提供を開始し、3月末までに1万ID以上を販売しました。アプリケーションの改修でパケット使用量が増えたお客様など、回線費用の見直しと合わせて、導入していただくケースが増えています。また、新型インフルエンザを契機に、テレワークへの関心もかなり高まってきました。PCの持ち出しを制限する企業は多いですが、その一方で工夫を凝らして積極利用することでビジネスの生産性を高めているお客様もいらっしゃいます。そうしたお客様を中心に販売活動を行った結果、これだけの数を販売できたと考えています。
 従来のPCや携帯電話に加え、2010年度は、iPhoneとAndroid端末の収容も当然やらなくてはいけませんし、LTEもアクセス回線の1つとして追加する予定です。

(聞き手・土谷宜弘)
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