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2010年8月号

ブイキューブ 代表取締役社長
間下直晃氏
Web会議市場拡大を牽引
目指すはアジアNo.1

景気低迷を追い風に拡大するWeb会議市場。
出張費削減だけでなく業務効率化、ワークスタイル変革
の効果にも注目が集まっている。
国内市場でシェアトップを誇るブイキューブ間下社長に
今後の展望、アジア開拓への意気込みを聞いた。

Profile

間下直晃氏
(ました・なおあき)
1977年12月、東京生まれ。2000年3月慶應義塾大学理工学部卒業、02年3月慶応義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修了。大学在学中の1998年10月にブイキューブインターネットを設立し、同社CEOに就任。02年に学校法人慶應義塾とTLO(技術移転機構)を利用して資本提携。03年のV-Cube USA,Inc.(米ロサンゼルス)の設立、子会社化や吸収合併などを経て、06年4月にブイキューブに社名変更し、同社CEOに就任。現在に至る

Web会議やテレビ会議によるビジュアルコミュニケーションを活用する企業が増え、市場も順調に成長しています。

間下 3つの追い風がありました。
 1つは、ムダな移動を減らすことがCO2排出削減につながるというエコの観点。そして、やはり大きかったのは、景気後退によって多くの企業が出張費を削減したことです。「動かずに仕事をしなさい」という状況は、今でも続いています。
 遠隔で仕事をするにも、日本には米国のように電話会議で仕事を進めるという文化がありません。フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションが必須です。
 その場合にまず浮かぶのはテレビ会議システムでしょうが、企業の業績も悪化している中で新規投資をするのは難しい。サービスとして使えるWeb会議に注目が集まるのは当然でした。

リーマンショック以降あらゆる業界が苦境に陥るなか、ビジュアルコミュニケーション市場は、まさにその状況がチャンスになりました。

間下 もう1つ、パンデミックという要素もあります。新型インフルエンザの流行で、事業継続管理(BCM)に企業の目が向けられました。事業所間の移動ができなくなったり、在宅勤務にせざるを得なくなったときにどうするのか。そういった観点でも、Web会議が大変有効なツールだという理解が広まりました。
 また、その影響で労働環境の改善のために在宅勤務を活用していこうという機運も高まりましたね。

経費削減や労働環境の改善など、Web会議は最近の企業の方向性に合致していると言えますね。

間下 ワークライフバランスという考え方においても、グローバル化への対応においても、Web会議は重要なツールとして認識されています。
 実際に、昨年の問い合わせの数は一昨年の10倍に増えました。今年はさらにその1.5倍です。

実績はどうでしょう。現在の導入社数は。

間下 当社の累積の導入社数は、OEMを除いて1500社です。増加のペースは急激に上がっていますね。今年は「年間で1000社増」とまではいきませんが、数百社台の後半は確実で、それくらいの勢いがあります。
 最近の傾向としては、官公庁や独立行政法人のお客様が増えていますね。これも、Web会議の認知度向上に影響していると思います。

導入社数・利用規模ともに増大

1社当たりの利用規模も増大しているのではないでしょうか。

間下 その通りです。間もなく、ある金融機関が600店舗で我々の「V-CUBE ミーティング」の利用を始めます。当社のサービスは、ユーザー1人1人にIDを発行して課金するモデルではなく、1契約で複数人が利用できる“貸し会議室制”なのですが、1社当たりの部屋数は確実に増えています。

ICTツールには一般的に、大企業から導入が始まって徐々に中小企業へと裾野が広がっていく傾向があります。Web会議にもそうした流れは見られますか。

間下 Web会議は必ずしもそうした流れにはありません。
 大企業のほうが問題意識が高かったり、拠点数が多いためにコスト削減効果が大きいので、導入意欲が高いのは確かです。
 しかし、Web会議を利用するためのPCやネットワーク環境も含めて考えると、中小企業の方が導入しやすいケースも多いのです。例えば、Bフレッツ回線を100人でシェアしている中小企業では問題なく導入できますが、大企業では50Mbpsの回線を数千人でシェアしている場合もあります。このような場合、SaaS型で全社的に利用するにはインフラを改善する必要があります。
 当社のお客様も、半分は売上50億円以下のSMBが占めています。

御社は市場調査で3年連続のシェアトップ(シード・プランニングの『テレビ会議/Web会議の最新市場動向 2010』では、2009年の見込販売金額でシェア19.4%)です。その立場から見て、市場は今後、どのように成長していくと考えていますか。

間下 おそらく2〜3年で、企業内の会議をWeb会議で行うというのは当たり前のことになるでしょう。
 調査会社の予測では、市場規模が2018年に1000億円を超えると言われています。それが現実になるかはわかりませんが、社内コミュニケーションで使われているだけで、そこまで成長できるとは思っていません。
 3年後くらいには、拠点と在宅勤務の間で使う、異なる企業間で使うなどの、社外コミュニケーションでの利用が増えてくるでしょう。
 また、すでにビジュアルコミュニケーションを使った新しいビジネスモデルが増えてきています。代表的なのは教育分野です。他にも、これまで実際に集客をして商品を説明して販売していた会社が、それをWeb会議の仕組みを使ってオンラインで商品を販売するケースも出てきました。Web会議が店舗の役割を果たしているわけです。
 コストダウンのためのツールだというのが、もともとのWeb会議の位置付けでしたが、Web会議で収益を生み出そうという流れが起きています。

本質は「場所を提供する」

そうした用途の開拓が、市場をより成長させることになりますね。

間下 我々のビジネスは「場所を提供する」ことです。「インターネット上で共有できて集まれる場所」を貸しているのです。その使い方には、会議もあるし、セミナーもあるし、商品の販売もある。業務を効率化してもらってもいいし、その場を使ってビジネスをしていただいてもいいのです。
 リアルな場所を使って実際に会って行っているビジネスはすべて、オンライン上に移り替わる可能性は十分にあります。

Web会議、ビジュアルコミュニケーションの捉え方としては、非常にユニークな考え方ですね。

(聞き手・太田智晴)
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