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2011年1月号

富士通
執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループ長
大谷信雄氏
ドコモとauでトップ取り国内1位へ
海外展開は量より付加価値を重視

2010年に携帯電話事業を統合した富士通と東芝。
富士通本体はNTTドコモ、
新会社はauとソフトバンクモバイルと3キャリアに対応する。
執行役員常務で新会社の代表取締役社長も務める大谷氏は、
出遅れたスマートフォンを強化するとともに、au向けの台数を増やして
国内シェア1位を目指したいと意気込みを見せる。

Profile

大谷信雄氏
(おおたに・のぶお)
1975年4月富士通入社。2000年12月モバイルフォン事業本部統括営業部長。05年7月モバイルフォン事業本部長代理。07年6月常務理事モバイルフォン事業本部副本部長。09年6月常務理事モバイルフォン事業本部長。同年10月執行役員(兼)モバイルフォン事業本部長(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループユビキタスビジネス戦略室長。2010年4月執行役員常務(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループ長(兼)ユビキタスビジネス戦略室長。同年10月執行役員常務(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループ長、現在に至る

2010年10月、富士通と東芝の携帯電話事業が統合し、富士通東芝モバイルコミュニケーションズが発足しました。代表取締役社長の立場から、統合の成果をどのように見ていますか。

大谷 富士通はもともとNTTドコモ向けの携帯電話だけですが、東芝はauを中心にソフトバンクモバイル向けにも端末を作ってきました。昨年からは、Windows Mobileのスマートフォンをグローバルも含めて展開しています。技術面では、富士通はセキュリティやセンサーに力を入れており、東芝は液晶テレビ「REGZA」に代表されるように映像系に強みがあります。
 このように、ざっと見渡してもお互いにかぶっている部分がありません。その一方で、富士通はドコモとSymbian、東芝はauのKCP+と、プラットフォームを開発している点が共通しています。また、販売代理店の取り扱い上位3社が同じで、代理店関係者には非常に喜んでいただいています。まじめな社風も似ており、いい相手と一緒になったという印象を深めています。

現場での統合は順調に進んでいますか。

大谷 富士通の携帯電話事業のメンバーは、PCやワープロ、プリンターなど他の事業から集まってきた“寄せ集め”です。新たに東芝からメンバーが来ても何の違和感もありませんし、受け入れる土壌ができています。今のところは非常にいい具合に動いています。

NECは携帯電話事業を分社化してカシオ日立モバイルコミュニケーションズと統合しました。富士通は携帯電話事業を本体に残し、東芝の携帯事業を傘下に置いた形ですが、どのように事業のすみ分けを図るのですか。

大谷 富士通の携帯電話事業はそのままで、引き続きドコモ向けに携帯電話を供給します。従来、東芝がドコモ向けに納めていた機種は富士通の名前で出します。新会社ではauとソフトバンク向けにビジネスを行います。富士通はドコモ向けでシェアトップです。東芝もかつてはau向けでシェアトップだったので、その水準まで回復すれば、国内の出荷台数で1位になることも不可能ではないはずです。

“四重苦”を乗り越える

東芝の防水機能を搭載したスマートフォンがドコモとauから発売されます。富士通の技術力を活かしたスマートフォンを期待して待っているユーザーも多いのではありませんか。

大谷 富士通がやや遅れを取っているスマートフォン事業をリカバリーさせることも、東芝を買収した目的の1つです。スマートフォン事業の統合により開発者が一気に100人ほど増えるので、スマートフォン開発を加速させたいと考えています。2011年夏には「Fブランド」のスマートフォンを発売できると思います。

国内の端末メーカーはスマートフォンへの対応で遅れを取ってしまいましたが、何が原因だったのですか。

大谷 スマートフォンは、我々の予想を上回る速さで普及が進んでいます。国内メーカーは油断したわけではないのでしょうが、やや後手を踏みました。当社も含めてPC事業を手がけているメーカーは、「AndroidやWindowsはやる気になればできる」と高をくくっていたところがあります。我々にとっては、フィーチャーフォンの方がよっぽど開発にパワーが必要だからです。とはいえ、今後はスマートフォンにも本腰を入れて取り組んでいきます。

冬春モデルでは、コラボレーションモデルや防水端末、タッチパネル搭載端末など、バリエーションに富んだ携帯電話をドコモ向けで7機種、au向けで3機種を投入していきます。今後は、スマートフォンとフィーチャーフォンのバランスをいかに取るかが重要になるのではありませんか。

大谷 そうですね。2010年から2011年にかけては“四重苦”と呼んでいるんですよ。携帯電話市場のパラダイムシフトにより、従来のフィーチャーフォンに加えてスマートフォン、LTE端末、グローバル向け端末を開発しなければならないからです。
 いずれも最初は投資ばかりで、利益は期待できません。市場の拡大期ならパイが増えるので、その利益を投資に回すことができますが、現在のように成熟期を迎えている市場ではパイは広がらず、投資だけが増えていきます。端末メーカーは各社とも同じ立場でしょうが、開発に必要なパワーの配分を考えなければ生きていけない状況になっています。

業界関係者の間では、数年後に出荷台数でスマートフォンがフィーチャーフォンを上回るとの見方が大勢を占めています。

(聞き手・土谷宜弘)
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