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2011年2月号

NTTコミュニケーションズ
代表取締役社長
有馬 彰氏
クラウド軸に新たな成長を目指す
グローバルに強いNTTコムへ

電話事業の減収が続くなか、
「法人ビジネス」「ネットビジネス」「グローバル」の
3本柱で増収増益への転換を目指すNTTコミュニケーションズ。
2010年6月に就任した有馬彰社長は、キーワードに「クラウド」を挙げた。
「他社の先を行きながら、ビジネスを大きく育てたい」
と語る有馬社長に具体的戦略を聞いた。

Profile

有馬 彰氏
(ありま・あきら)
1973年3月一橋大学商学部卒業、4月日本電信電話公社入社。1999年7月日本電信電話(NTT)第一部門担当部長、2002年6月東日本電信電話(NTT東日本)取締役企画部長、03年4月同取締役経営企画部長、05年6月NTT取締役。07年6月NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長ネットビジネス事業本部長を経て、2010年6月同代表取締役社長就任。現在に至る。1949年8月生まれ、神奈川県出身

2010年度上期の連結決算で、営業収益は前年同期比4.4%減の5090億円、営業利益は同21.2%減の416億円と減収減益でした。この間、苦闘してきたNTT東西は、ようやく下げ止まって増収ないし増益が少し見えてきたようですが。

有馬 NTT東西についていえば、「フレッツ光」を中心としたブロードバンドサービスの割合が大きくなり、東日本は音声収入の減少をIP系収入がついにカバーし、西日本もその差が縮小しています。つまり、そういう転換点を迎えたということです。
 当社についていえば、加入電話からIP電話に移行すれば、どうしても中継部分の役割はどんどん減っていきますから、大きく影響を受けざるを得ません。
 また、NTTコムでないと提供できない企業向けネットワークサービスは当然ありますが、一般的にはNGNに需要がシフトするでしょう。

電話からIPへという大きなトレンドは、御社のサービスに多面的な影響を与えているわけですね。

有馬 NTT東西は「レガシーからIPへ」という戦略で事業は成り立ちますが、当社はそういうわけにはいかないということです。ですから、音声系の減収をカバーするには、IPベースの他の事業を新たに開拓しなければならないのです。これは単体のみならず、グループの課題としても取り組んでいるところです。

ネットワークを持つ強み活かす

そうしたなかで、今後はクラウドサービスである「BizCITY」が御社の大きな柱になってくるわけですね。

有馬 そうです。現在の通信業界を見渡してみても、クラウドほど新たなチャンス、かつ大きな流れになりそうなものは他にはありません。クラウドには、さまざまなプレーヤーが入ってきていますので、我々は流れに乗り遅れることなく、スピード感を持って対応し、常に先端を走りたいと思っています。それこそが、NTTグループのなかでの当社のミッションでもあります。

世の中がクラウド時代へと向かい、通信キャリアや機器ベンダー、SI/NIなどさまざまな業界から相次いでクラウド市場に参入するなかで、「誰がユーザーのニーズを勝ち得ていくのか」ということに注目が集まっています。

有馬 最終的に誰が勝つかはまだ誰にも分からないでしょうが、クラウドはネットワークがあって初めて活きるサービスなので、ネットワークを持っている強みを活かし、品質を担保しつつ、低コストで提供していきたいと思っています。その点、我々は決して不利なポジションとは思っていません。

いわゆるIaaS、PaaSはキャリアが得意とするところですが、アプリケーションの部分はどのように考えていますか。

有馬 メール等、一部の汎用的なものは自ら手掛けていますが、基本的には「餅は餅屋」ですから、今後ともアプリケーション事業者と連携して進めていきます。
 そういう意味では、当社が手掛けるクラウドサービスは、信頼性の高いクラウド基盤の提供が最も強い差別化ポイントということになります。

順次クラウド化を提案

「所有から利用へ」というクラウドサービスの特徴は、不況下のユーザー企業にとっては、安価で自ら投資をするリスクもなく、さまざまな事業機会をクイックに捉えられるという面で柔軟に使えるというメリットが活きてくるといわれています。

有馬 クラウドのメリットはその通りですが、情報漏えいといったセキュリティやネットワークの信頼性の問題などで、クラウドに対して不安を持つお客様がまだまだ多いのも事実です。そうした状況で、いきなりすべてをクラウドに移行するというのは無理ではないかと考えています。
 そこで打ち出したのが「ハイブリッドクラウド」で、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス(自社運用)をセキュアかつシームレスに利用できるサービスを提供します。例えば、顧客情報を扱うといったセキュリティを要求されるシステムは引き続きオンプレミスで行っていただきます。また、そこまでの高セキュリティは必要ないが、ある程度の柔軟性が必要な用途ではプライベートクラウド、社内の情報交換システム等については、より低コストで使えるパブリッククラウドを利用してもらうというイメージです。
 このように、クラウドで利用しやすいものから順次クラウド化を進めていただくことを考えています。

「ハイブリッドクラウド」戦略を昨年、明確に打ち出されましたが、これに対するユーザーの反応はいかがですか。

有馬 まだ始まったばかりですので、具体的な意見はこれからですが、お客様としてもクラウドを導入しやすくなるだろうと考えています。いきなり「全部をクラウドにして下さい」では、お客様は拒否反応を示されます。ただ、クラウドは一過性のものではなく、持続的な動きですから、我々としては戦略的に方向を明確にしておきたかったわけです。

クラウドサービスを事業の軸におくことによって、体制はどうなっていますか。

(聞き手・土谷宜弘)
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