●2010年11月30日に裁判所から更生計画の認可を受け、12月21日にソフトバンクグループの100%子会社になりました。新生ウィルコムの社長として、復活に向けた意気込みをお聞かせください。
宮内 ソフトバンクの子会社になったとはいえ、法律的には裁判所の管轄下にあります。私も肩書きは代表取締役社長ですが、現実には事業家管財人です。立場的に難しいのですが、とにかくPHS事業を再建したいと考えています。
●ソフトバンクがウィルコムの再建を担おうと決断した理由はどこにあるのですか。
宮内 もともと次世代規格のXGPについては早々と手を上げていましたが、PHS事業の方は債権をかなり落とさなければ再建は難しいと感じていました。しかし、他に名乗りを上げるところもなかったので、やるからには徹底的にやるしかないと考えました。
●12月1日の発表会では、「3カ月以内の純増を目指す」という目標を明らかにされていました。これまで純減が続いてきましたが、目標は達成できそうですか。
宮内 私は楽天的なところがあるのですが、こればかりはどうなるかわかりません。ただ、PHSの契約数がどうこうというよりも、ソフトバンクグループトータルでかなり相乗効果が上がるだろうということは確信を持っています。
というのも、ソフトバンクモバイルとウィルコムの加入者を合わせると12月末で約2800万です。また、ウィルコムは通信事業者の中では法人顧客の比率が約4割と高く、その多くがエンタープライズ(大企業)です。ソフトバンクグループの法人部門はソフトバンクテレコムが担っているのですが、両社の法人顧客を単純に合算すると、シェアでKDDIを抜いて2位になります。しかも営業先の一部が重なっていたり、あるいはテレコムがカバーできていない企業をウィルコムが担当しているケースもあります。
そこで、早速この1月にソフトバンクテレコムに法人第四営業本部を新設し、ウィルコムの法人営業部隊と連携して一体となって全国で動ける体制を敷きました。既存のPHS顧客を維持すると同時に、iPadや「おとくライン」、データビジネスなどソフトバンクテレコムの製品を組み合わせた提案をすることで、グループ全体として利益を出していきたいと考えています。
ブルーオーシャンを狙う
●携帯電話業界はスマートフォン一色ですが、そうした中でもPHSを活用する道はまだ残っているということですね。
宮内 携帯電話事業者3社の間では、ソフトバンクモバイルがiPhoneを成功させたことで“スマートフォン大戦争”が起きています。だからといって、ウィルコムも「W-ZERO3」を再び発売して戦いを挑んでも意味がありません。
マーケットでは、レッドオーシャン(競争の激しい領域)とブルーオーシャン(競合相手のいない領域)という言葉が使われます。スマートフォン分野は熾烈な価格競争が繰り広げられるレッドオーシャンですが、ウィルコムはもう少し落ち着いたセグメンテーションでしっかりやっていけば、単価は低いけれど、将来的にブルーオーシャンを狙うことができます。
ウィルコムに来てわかったことですが、エレベーターの保守監視・非常電話やLPガスの検針、自動販売機、コンビニのATMに設置されているガイドホンなどにPHSが使われています。今度、AED(自動対外式除細動器)の遠隔死活監視システムに導入されることも決まりました。他にも介護用キットやFAX回線といった新しい提案がメーカーなどからどんどん来ています。これはウィルコムが元気になった証といえるでしょう。
PHSは省電力・低電磁波といった特性から、医療機関や流通業で圧倒的なシェアを誇っています。思い返してみると、ソフトバンクテレコムの担当者に病院に営業をかけさせたときも、まったく取れませんでした。2015年にスマートフォンのシェアが70%になるとの予測もありますが、そうした状況でもセグメンテーションされたPHSのマーケットは、規模は大きくなくても確実に残るはずです。
●「ソフトバンクグループ4番目の通信会社」となることで、これまでウィルコムの弱みだった部分が強みとして活きることになります。
(聞き手・土谷宜弘)
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