●携帯電話市場は2010年度、スマートフォンが本格的な普及期を迎えました。販売代理店の立場から市場動向をどのように見ていますか。
中川 当社が運営する携帯電話ショップでもスマートフォンの販売台数はかなり増えており、直近の昨年12月は全販売台数の25%がスマートフォンでした。
その背景には、一般ユーザーがスマートフォンを求めていることもありますが、フィーチャーフォン(従来の携帯電話)との価格差が大きいのではないかと見ています。
音声ARPUが右肩下がりになっている中で、通信事業者はデータARPU増に向けた取り組みを強化しています。しかし、「iコンシェル」など個々のサービスに加入していただくよりも、スマートフォンを使っていただいた方がデータARPUが上がることが分かってきました。そこで、通信事業者はスマートフォンへの移行を誘導するような流れを作っているのだと思います。
店頭をご覧になればわかりますが、高機能携帯電話の売価が5〜6万円に対し、スマートフォンは3万円台です。より機能が充実しつつあるスマートフォンの方が安いことから、一般ユーザーはスマートフォンを選ばれているのではないでしょうか。
●ドコモは今年度のスマートフォン販売台数を250万台に上方修正するとともに、2011年度の販売計画を600万台としました。
中川 当分スマートフォンの勢いは止まりそうにないので、私も来年度はそれぐらいの台数が売れると見ています。
スマートフォンの販売台数が大幅に増えると、通信事業者はそれだけ販売費用の負担が大きくなり、場合によっては経営を圧迫します。そのため、フィーチャーフォンが高機能端末やシンプル端末などいくつかの種類に分かれているように、スマートフォンでもハイエンドモデルに加えて、海外メーカー製の廉価版を投入してくるのではないかと予想しています。
●そうなると、国内の端末メーカーはますます厳しい戦いを強いられることになります。
中川 ただ、国内メーカー製のスマートフォンには、ワンセグやおサイフケータイなど日本独自機能が搭載されています。従来の携帯電話と同じ機能が付いていることで、ユーザーは安心して移行できます。実際、XperiaやGALAXY Sは発売時に競合端末がなかったこともありヒットしましたが、シャープや富士通東芝モバイルコミュニケーションズのスマートフォンが発売された昨年末以降は、そちらに人気が移っています。
海外勢が、グローバルで展開しているスマートフォンにこれらの機能を搭載して日本市場に投入してくると戦いはさらに激しくなるでしょう。しかし、開発費の負担が大きくなるため、市場規模の小さい日本では、その可能性は低いかもしれません。
VCSを異業種にも展開
●携帯電話からスマートフォンへと急速に移行が進む中で、販売代理店も変革を迫られています。御社ではどのように対応していくのですか。
中川 スマートフォンの需要拡大に合わせて、販売現場ではお客様からの問い合わせが増えています。ショップスタッフだけでは商品の説明をしきれないので、どう対応するかが携帯電話ショップにおける大きな課題です。
スタッフ教育でカバーするといっても限界があります。そこで当社では、テレビ会議システムを活用した「ビジュアル・コンシェルジュ・サービス(VCS)」を展開しており、現在、直営のドコモショップ十数店舗で導入しています。
スマートフォンはソフト、ハードの機能が複雑なため、うまく動作しないときにソフトとハードのどちらに原因があるのかショップスタッフでは判断がつかないケースがあります。また、スマートフォンにおけるアプリケーションの相談も増えてきています。VCSは操作説明に加えて、こうした相談にも活用することができます。また、法人向けのスマートフォン販売では、VCSと連携することにより単に使い方の相談や端末の管理のみならず今後は業務プロセスの一部アウトソーシングまで含めて事業領域が広がることを期待しています。
VCSは他の販売代理店の関心も高く、たくさん問い合わせが来ています。今後は旅行代理店など異業種への展開も視野に入れています。
●スマートフォンに加えてタブレット端末、データ通信カード、Wi-Fiルーター、ネットブックなど携帯電話ショップで取り扱う商材も多様化しています。
(聞き手・土谷宜弘)
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