●2004年の設立当初より社長を務められてきたアラクサラネットワークスから、今年4月に日立製作所の通信ネットワーク事業部長に就任されました。ルーターやスイッチと通信機器とでは、仕事の様子も変わったのではありませんか。
和田 一番大きな変化は、扱う製品の分野、バリエーションが広がったことです。ご存じの通り、私どもの製品領域は、企業向けのPBXやビデオ会議システムの「Wooolive」から、携帯電話や固定通信のインフラ関連まで、実にさまざまな分野に及んでいます。
このなかには、非常にポテンシャルの高い、世界市場に持っていって十分に戦える商材が沢山あります。それらを有効に活用しながら、この事業部、ひいては日立のネットワーク事業の拡大に向けて次の手を打っていきたいと考えているところです。
企業向けの販売チャネルもルーター/スイッチについてはネットワークインテグレータが中心ですが、PBXでは従前からの特約店が一番のチャネルになりますから、こことの連携強化を仕掛けていかなければいけません。
もう1つ、着任したのが3月の大震災の直後でしたから、その影響も強く受けることになりました。同時多発的にいろいろなことが起きていて、非常に忙しいと感じています。
災害対策で評価されたWooolive
●まず、通信機器市場の現状ですが、震災の影響はかなり大きかったのでしょうか。
和田 当事業部でも上半期の業績に影響が出ています。キャリア関連とともに、企業のネットワーク投資も減速しています。
もっとも、これには私どもベンダー側の責任もあったのです。
被災した郡山工場も3月中には稼働を再開できたのですが、部品が手に入らず、お客さまがご要望する納期通りに製品を出せないという状況が第2四半期の前半くらいまで続きました。
現在は、ほぼ従来通りの納期でいけるようになっています。
来年以降は震災の影響も薄れて、通常の市場動向に沿った形になると思いますが、国内のマーケットはキャリア向け、企業向けともにフラットか、あるいは少し減少していくというのが、全体の市場感といえるのではないでしょうか。
●震災後は事業継続対策を見直す企業も出てくるなど、新たなニーズが顕在化してきたという面もあると思います。
和田 確かにお客さまが災害への対応を真剣に考えられるようになり、その中でPBXやWoooliveにも加速感が出てきています。
例えば、震災時でも業務を継続できるように事業所の電話をしっかりしておきたいというニーズがかなり強くなっていて、これに対応できるコンポーネントを用意し、積極的に提案をしています。
その1つが「VoIP-GW」です。PBXにこれを装備すれば、災害時に公衆回線の発信規制がかかってもイントラネット経由で通信を確保することができます。
また「携帯電話アダプタ」を導入すれば、固定電話回線が不通になった場合にモバイル回線を代替として使うことができます。モバイル回線にも発信規制はかかりますが、まったくつながらないのとは雲泥の差があります。PBXはバッテリーでも一定時間稼働するようになっていますから、停電時でも通信は確保できます。
これらの製品は以前からあったわけですが、震災によって「費用対効果」が測れるようになり、実需に結び付いているのだと思います。
防災関連ではWoooliveの評価も高まっています。今回の台風で、ある県から非常に役に立ったという評価をいただきました。Woooliveは回線が細くても高画質の映像や音声が送れます。これが災害時に生きてくるわけです。
また、Woooliveはクラウドサービスの形でも販売していますが、導入が容易でかつ迅速になる点も評価していただいてます。
UC指向しPBX開発
●PBXではユニファイドコミュニケーション(UC)を切り口としたリプレース需要への期待感も大きいと思います。御社では特にWoooliveとPBXの連携に力を入れていますが、その成果は出てきていますか。
和田 WoooliveとPBXとの連携は提案の売り物にはなっているのですが、これだけでリプレースに結びつくという状況には、まだなっていません。
当事業部ではUCを見据えて、新機能の追加と、既存のインターフェースをしっかりサポートすることの2つを柱にPBXの開発を進めています。特に、お客様にさらに喜んでいただける機能を実現して需要拡大につなげていきたいと考えています。
●具体的には、どのような機能の搭載を考えているのですか。
(聞き手・土谷宜弘)
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