●KDDIでは、従来の「移動通信」「固定通信」という区分をあらため、今年度から「パーソナル」「バリュー」「ビジネス」「グローバル」という新セグメントに再編します。新規事業統括本部の事業領域はバリュー(家庭および個人向けのコンテンツ・決済サービスの提供)に該当しますが、今後どのように伸ばしていくのですか。
煖エ 現状、フィーチャーフォンのバリューが予想を上回るスピードで落ち込む一方、スマートフォンのバリューは着実に伸びています。
ただ、スマートフォンのバリューについては一からやり直さないといけないと考えています。というのも、フィーチャーフォン時代のコンテンツは、お客様は必ずKDDIのポータルサイトであるEZwebから閲覧・取得するようになっていましたが、スマートフォンになってフェイスブックやグリー、ディー・エヌ・エーのように自分たちでユーザー会員を持つプレイヤーが増えており、ユーザー接点が分散しているからです。お客様の立場からすると、必ずしも通信キャリアのサービスを利用する必要がなくなっています。
●では、KDDIはどのような役割を果していくのですか。
煖エ そうした企業の方がユーザー接点を作ることに長けているので、そこは任せるとして、我々の一番の強みである決済を活かすことを考えました。SNSであれデジタルコンテンツであれ、決済のところには必ず入っていこうとしています。
実は決済分野で他キャリアよりも進んでいるのが、イーコマースです。自社のコンテンツとして「auショッピングモール」を運営しているだけでなく、楽天やYahoo!のショッピングサイトでもauかんたん決済に対応していただいています。PCで買い物をしても、代金はauの月額料金と一緒に請求されるので便利です。楽天edyもauかんたん決済でチャージできます。
このように、まずは決済のところを広げてきました。しかし、その方向性では将来的に行き詰まってしまいます。経営陣がいろいろと考えた結果、生まれたのが「3M戦略」であり、auIDをベースにユーザー接点を取り戻す狙いから、「auスマートパス」などのサービスを作りました。
●「マルチネットワーク」「マルチデバイス」「マルチユース」からなる3M戦略の第3弾として、Android 4.0を採用したSTB(セットトップボックス)「Smart TV BOX」のトライアルを8月に開始し、今秋から本格展開します。
煖エ もともとCATVは多チャンネル放送を見るためのSTBを入れていますが、Smart TV BOXは単にテレビ番組を視聴するだけでなく、インターネットやKDDIのサービス、アプリにも接続することで付加価値を提供します。
YouTubeやニコニコ動画を見ながらSNS上でコメントし合うことも可能ですし、しおり機能により、外出先でスマートフォンで視聴していた動画の続きを自宅のテレビで見るといったこともできます。「LISMO Wave」「LISMO unlimited」などKDDIの音楽サービスやゲームも楽しめます。また、シニア層の生活を支えるネットショッピングや料理レシピなど生活系のコンテンツも揃っていますし、CATVならではのローカル情報にも力を入れています。
さらに、auスマートフォン向けアプリの中から適したものをピックアップして載せることも検討しており、月額390円でアプリが取り放題になる「auスマートパス」に加入していれば無料で利用できます。Google Playも搭載するので、今後スマートTVが普及したときに、対応アプリをダウンロードするとスマートフォンのように画面上に並ぶイメージです。このように、STBでスマートTVの機能を補完することもできるようになると見ています。
●CATV事業者にとっても、顧客獲得などのメリットがありますね。
(聞き手・坪田弘樹)
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