●CTOとしてこの間、インフラ建設の責任を持ってきましたが、7月25日から念願の900MHz帯のサービスが始まりました。
宮川 900MHz帯の設備投資に会社として2年間で1兆円もの金額を投じるので、結果を出さなければならないと強いプレッシャーを感じています。
総務省に提出した計画書では2017年3月末に基地局4万1000局、エリアカバー率99.9%を目指すことになっているのですが、できるだけ2014年3月末までに一通り決着をつけたいと考えており、社内向けにもそうハッパをかけています。
●2012年度は1万6000局を上回る基地局を設置する方針ですが、進捗状況はどうですか。
宮川 実は総務省から周波数をいただく1年前から、獲得を前提に計画を立てていました。周波数が割り当てられた時に「ありがとうございます。これから本気で取り組みます」というのでは愚の骨頂だと思ったからです。ドコモやKDDIがすでに持っているネットワークに追いつき、追い越して3社の中で1番になるような計画だと自負しています。
2年という短い期間で集中的に投資をするため、機材を一括購入したり、工事の回転数を上げたりしていますが、ばらばらにやると1兆5000億円ぐらいかかる計算です。
もともと持っている鉄塔をすべからく利用しつつ、加えて新しい鉄塔も次々に建てています。通建業界で年間を通じて建設できる鉄塔数には限度があるので、新たにゼネコンを使いコンクリートポールを建てています。
通常のコンクリートポールは高さが25メートルですが、それではちょうど樹木にひっかかってしまうので、高さ30メートルのコンクリートポールも作っています。沖縄で実験したところ、台風の影響も受けませんでした。
●ドコモやKDDIを超えるというのは、どのような指標ですか。
宮川 我々の指標は、お客様が使いたい時に発着信できるかどうかです。お客様が来ない場所まで広げるつもりはありませんが、ドコモかKDDIのどちらかがカバーしているエリアは当社の電波も入るように設計しています。お客様の行動範囲は広く、しかも各社のカバーエリアは少しずつずれているので大変ですが、これができれば当社のエリアが一番広くなります。ただ、いったん完成しても、お客様の声を聞いて、やり直しが発生することもあると予想しています。
●900MHz帯の基地局建設は大都市中心で地方を軽視していてつながらないとの指摘があるようです。
宮川 すでに北海道から沖縄まで全国で一通り電波を出しています。地方軽視で東京が多いかというと決してそんなことはありません。むしろ都内では同時並行でLTEの基地局建設も進めているので人手が足りず、工事に手こずっているぐらいです。
PHSは音声に特化して継続
●ソフトバンクグループ全体では、3G、LTE、PHS、AXGPと複数のネットワークを持つことになりますが、今後はどのように使い分けるのですか。
宮川 まず900MHz帯については携帯電話事業に参入したときから「何としても取るぞ」と決めていました。結果的に8年かかりましたが、ようやく手に入れることができました。今後は900MHz帯がメインになりますが、移行が完了するまでは上下5MHz幅ずつしか使えないので、当面は隙間を埋めるような形で使います。
3Gで使っている2GHz帯は4波あり、今年はそのうち1波をFDD-LTEに切り替えています。W-CDMAからの移行なのでソフトウェアをアップデートするだけで意外に簡単ですが、山手線圏内のようにトラフィックが多いエリアでは900MHz帯の電波を出して5波にして3Gユーザーを収容してから2GHz帯の1波を落としLTEに切り替える作業が必要になります。一方、東京以外の地域は余裕があるので、一気にLTEに展開します。来年からは、さらにもう1波をLTEに切り替える予定です。
Wireless City Planning(WCP)が展開するAXGPの2.5GHz帯についてはきっちり作り込んでおり、現在は約1万3000局になっています。
●AXGPは下り最大110Mbpsと現状では他社のネットワークと比べても圧倒的に高速ですが、どのように評価していますか。
(聞き手・土谷宜弘)
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